『invert 城塚翡翠倒叙集』城塚翡翠は古畑任三郎がお好き?

ミステリー

 シリーズ前作『medium 霊媒探偵城塚翡翠』(2019年)でミステリーランキング五冠獲得した相沢沙呼(あいざわ さこ)。

ミステリー界 期待の星です。

「さこ」というペンネームから女性が連想されますが、男性作家。

『medium 霊媒探偵城塚翡翠』は

その、驚きのラストから「続編は不可能では?」と言われていました。

それが2021年7月7日『invert 城塚翡翠倒叙集』という短編集が出版されたのですから驚嘆。

さっそく読んでみたので感想を書いてみたいと思います。

果たして、続編は成功したのか否か?

また、この記事は『invert』の内容について言及しています。

勘のいい方はネタを割ってしまう危険があります。

ご注意くださいませ。

『invert 城塚翡翠倒叙集』のあらすじ

 まず、タイトル。

「invert」の意味。

「他動詞 …を逆さにする、ひっくり返す、…を裏返しにする:<位置・順序・関係>を反対にする:<性質・効果などを逆転させる:inverted detective story:倒叙推理小説」

という説明が本の扉に書いてあります。

「倒叙推理小説」とは犯人の側から描いてあるミステリーのこと。

有名なのはF・W・クロフツやリチャード・ハルの作品。

ドラマでいうと「刑事コロンボ」や「古畑任三郎」ですね。

日本の推理小説では松本清張の短編に倒叙ミステリーが多いです。

推理小説の中の犯人は鉄壁のアリバイを作ったり、トリックを用いたりして完全犯罪をもくろみます。

それを、探偵側が小さなほころびを見つけて追い詰めていくという頭脳戦が見どころ。

ちょろ
ちょろ

クリスチアナ・ブランドの短編「ブラックコーヒー」は倒叙ミステリーのお手本といわれています。

探偵役がいない場合は、犯人の小さな「ミス」で悪事が露見するプロセス、犯人の心理を細かく追った書き込みのリアリティが見どころとなります。

前述した松本清張の短編には前者が、パトリシア・ハイスミスなどは後者の作品が多いです。

もず
もず

松本清張の『捜査圏外の条件』や『書道教授』は倒叙物の代表ですね。

さて、『invert 城塚翡翠倒叙集』には3つの作品が収録されています。

「雲上の晴れ間」

「泡沫の審判」

「信用ならない目撃者」

です。

このうち、2番目の「泡沫の審判」は「小説現代」(2021年1月号)に掲載されたもの。

最初と最後は書下ろしというのですから贅沢です。

<あらすじ>

 『medium』で連続殺人鬼の逮捕に一役かった城塚翡翠。

「専門家」として警察の捜査に協力することとなります。

ITエンジニア、小学校の女性教師、探偵会社の社長―。

彼らは完全犯罪の計画を立て、着実に実行に移したはず…。

ですが、「霊感がある」という妙齢の美女が犯人たちの前に立ちはだかります。

果たして、完璧な計画のどこに齟齬(そご)があったのか?


『雲上の晴れ間』は、虐げられたITエンジニアの男性が自分の人生を取り戻すべく社長を殺害。

『泡沫の審判』は小学校の女性教員が脅迫者を事故に見せかけて手にかけます。

『信用ならない目撃者』は探偵会社の社長が保身のために殺人を犯しますが、なんとその現場をある女性に目撃されてしまい…。

果たして「霊媒探偵」 城塚翡翠は彼らをどう出し抜くのか!?

 どのお話もよく練られていて面白かったですね。

相変わらず、あざとくかわいい城塚翡翠。

ちょろ
ちょろ

計算高さもかわいいと思わせる珍しいヒロインですね。

彼女を微妙な距離感で助けるアシスタントの千和埼真(ちわさき まこと)。

今回 城塚翡翠は髪を茶色にそめ、赤い縁の眼鏡をかけ、カラーコンタクトレンズを入れるなど変装というよりコスプレのような趣向があります。

前作もそうでしたが、なんともライトノベル感・漫画的な部分が濃いですね。

もず
もず

ライトノベル作家で漫画原作者だけあってファンサービスを忘れないです。

今作の販売促進グッズを見ていても、主人公のファンが多いのだろうな、と思いました。

遠田志帆のイラスト、雰囲気があっていいですよね。

綾辻行人『anaother』の表紙が有名。

陰があって、繊細。

でも、鋭い―。

独特な絵柄で一度見ると忘れられないですね。

 女性の視点で見ると城塚翡翠の服装というのはちょっと首をひねりたくなりますが、(笑)

どこまで本気か分からないキャラクターという設定なのでスルーしていいんでしょうね。

この作者は読者がなめてかかるとそこをついてひっくり返してくるので気が抜けません。

今回も…結構やられてしまいました。(笑)

気を付けていたのに…。

ところどころに「刑事コロンボ」や「古畑任三郎」のオマージュがあって笑わせていただきました。

「ところで、〇〇さん、もうひとつだけ―」

とか、

解決編へ行く前の読者への挑戦とか。

城塚翡翠、若いのに古畑任三郎ファンなのか…。

また、シャーロック・ホームズについての言及が多く、ミステリーファンサービスは抜かりないな、と。

推理小説としても楽しめましたよ。

特に第三作目『信用ならない目撃者』は二度読み必須。

相沢沙呼 城塚翡翠シリーズ以外のミステリーは?

 さて、相沢沙呼はいくつかシリーズものを持っています。

「酉乃初シリーズ」「マツリカシリーズ」「小説の神様シリーズ」など。

最初の2つはいわゆる日常の謎のミステリー。

どうやらこの方はマジックがお好きなようで酉乃初シリーズはマジシャンが主人公。

代表作『午前零時のサンドリヨン』。

今回、『信用ならない目撃者』に出てくる黒髪が魅力的な女性マジシャン。

名前が出てきていませんが酉乃初なんじゃないかな?と思っています。

ちょろ
ちょろ

20代半ば、長い黒髪、レストラン・バーで奇術を見せる、トランプマジックが得意などの共通点があります。

もず
もず

私は「酉乃初」という字面を見ると竹本健治『ウロボロスの偽書』の

酉つ九芸者を思い出します。そこはそれ。

マジックが好きな人はミステリー作家に向いているんですよね。

有名なのは泡坂妻夫。

奇術愛好家で奇術師でした。

『乱れからくり』『11枚のとらんぷ』など名作多数。

いかに人の注意をそらすか、ミスリードするかなど、マジックとミステリーは使える技術が似ているのかもしれませんね。

漫画家だと青山剛昌は『名探偵コナン』を描く前に『まじっく快斗』という作品を世に出していますね。

また、相沢沙呼は童話が好きな様子。

今回も「サンドリヨン」という名前のノンアルコールカクテルが登場します。

シンデレラのフランス語読み。

ちなみに『ロートケプシェン、こっちにおいで』というタイトルの作品がありますが、ロートケプシェンは赤ずきんのこと。

ドイツ語ですね。

推理小説作家はマザーグースや童話が好きですね。

 相沢沙呼の新刊、いろいろ突っ込みつつも楽しめました!

表紙で敬遠する方もいらっしゃるのでしょうが、読まず嫌いは損!

少しでも気になったら手に取ってみてください。

お付き合いいただき、ありがとうございました。

少しでも参考にしていただけるとうれしいです。

よろしかったらこちらもどうぞ。

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