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二見文庫で2021年4月に出版されたグリア・ヘンドリックス&サラ・ペッカネンの小説『完璧すぎる結婚』。
おもしろそうなタイトルと帯の「『ゴーン・ガール』以来、最高の心理スリラーだ」というイン・タッチ・ウィークリー誌の宣伝文句に目をとめた人が多いのではないでしょうか。
原題は『THE WIFE BETWEEN US』
翻訳は風早柊佐。
2018年に出版され、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が「2018年冬に読むべき6冊の本」に選出したというのですから興味をひかれますね。
既に映画化が決定。
同じ著者たちの第2作はテレビシリーズ化が決定というのですから期待が高まりますよね。
今回はこちらの小説をご紹介したいと思います。
『完璧すぎる結婚』は三部構成でエピローグがついています。
『完璧すぎる結婚』のあらすじ
物語の舞台はニューヨーク。
ネリーは肩までかかるブロンドの髪を持つ美しい女性。
27歳。
フロリダの出身です。
ラーニング・ラダー保育園という高級保育園で教えています。
ですが、マンハッタンの家賃は高い―。
同僚のサマンサ(サム)とルームシェアしていますが、暮らしていくには副業が必要。
夜はウエイトレスとして働く多忙な日々を送っています。
彼女にはリチャード・トンプソンという婚約者がいます。
偶然に出会った彼は36歳のバツイチ男性。
ヘッジファンド・マネージャーで裕福。
気前が良く、いつもネリーに高価なプレゼントをしてくれます。
スポーツマンらしい体格、ネイビーブルーの瞳。
教養があり、多趣味です。
気配りができて、女性の扱いを心得ています。
結婚が決まって、重すぎるダイヤの指輪をはめていてもネリーは憂鬱。
婚約してから無言電話がかかってくるなど、おかしなことがあるからです。
理想的な彼氏との明るい未来を心に描いても気持ちが晴れないネリー。
ネリーは過去に大きなトラブルがあり、トラウマを抱えている様子。
無言電話、頭に浮かぶリチャードの元妻の存在―。
複雑に絡み合う人間関係、過去と現在。
手に汗を握る心理サスペンスです。
『完璧すぎる結婚』の感想
これは、買って損がない本ですね。
これだけのクオリティの作品を文庫本で出してくれてありがとうございます、と出版社に対してお礼が言いたいくらいです。
気になっている方はあらすじだけを読んで、本を手にした方がいいと思います。
いやー、本当に久しぶりに楽しめましたね〜。
グリア・ヘンドリックスは名編集者。
サラ・ペッカネンはベテラン作家。
どちらも尊敬しあっている関係だったそうです。
その二人がタッグを組んで初めての作品。
出版業界に身を置くプロふたりが紡いだ物語です。
それはおもしろいに決まっています!!
しかも、売り上げがコンピューターではじき出されて駄目ならすぐにお払い箱のアメリカ出版業界。
娯楽に関してシビアですから。
さて、感想。
*注意
この先の文章はミステリー好きな方、カンのいい方はトリックが分かってしまうのでご注意ください。
この小説は三部構成+エピローグです。
第一部は二人の女性の視点が交互に描かれています。
結婚が決まったネリー。
リチャードに捨てられ、彼が再婚することを知ったヴァネッサ。
どちらの女性も日常生活や悩みがリアルに描かれていて臨場感があります。
![ちょろ](https://www.bull-headed-shrike-gecko.com/wp-content/uploads/2022/08/IMG_2087.jpg)
ニューヨークの家賃の高さ。でも、ルームシェアは苦労が多そう。
![もず](https://www.bull-headed-shrike-gecko.com/wp-content/uploads/2022/03/224844-1.jpg)
ヴァネッサは専業主婦だったのに社会復帰でいきなりデパート店員。こちらもつらそう。
この第一部を読んでいると原題『THE WIFE BETWEEN US』のままの状態なんですが…。
原題を直訳すると「私たちの間にいる妻」。
邦題の「完璧すぎる結婚」とは全く違いますね。
日本人の感覚だと、お相手の男性がバツイチという時点で「完璧すぎる」はないかな、と思いますね。
正直なところ、第一部のトリックはミステリーファンならすぐにわかると思います。
日本の推理小説作家が名作をたくさん産み出していますからね。
著者はフェアに書いているので、「ああ、うんうん」って感じですかね。
分かりやすいヒントをいくつも出しています。
ただ、その部分が分かっても第二部以降はどんでん返しの連続。
連城三紀彦の最盛期を思い出しましたよ。
彼がご存命だったら絶賛されただろうな。
男女の心理サスペンスが好きでしたからね。
ハラハラドキドキの連続。
![ちょろ](https://www.bull-headed-shrike-gecko.com/wp-content/uploads/2022/08/IMG_2087.jpg)
連城三紀彦がご存命であれば帯の惹句を書いていたと思います。
心理サスペンスは後味が悪いじゃないですか。
ですが、この作品は不思議と明るく前向きな気持ちにさせてくれます。
ややネタバレになりそうですが私は松本清張の短編「薄化粧の男」が好きなんですよ。
固定観念を逆手に取るっていうんですかね。
すごく上手いと思います。
『完璧な結婚』もそうですね。
既存のトリックを重ね合わせて、新しい味わいのあるミステリーに仕上げています。
ところで帯で引き合いに出されているギリアン・フリンの『ゴーン・ガール』。
あの小説の中に『完璧な結婚』の登場人物と似た人物が出てきます。
引用されるのはダテじゃないです。
私はこの著者の作品が気に入ったので次回作も買おうと思いました。
お付き合いいただき、ありがとうございました。
参考にしていただけるとうれしいです。
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