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イギリスの推理小説作家クリスチアナ・ブランド。
(1907〜1988)
優れた女流ミステリー作家を輩出したイギリスでも高く評価されている本格派です。
北村薫ほか、日本のミステリー作家にもファンが多いクリスチアナ・ブランド。
緻密な描写、独特な人物造形、本格推理ということでなかなか手が出せないという人がいらっしゃ
るかもしれません。
今回は彼女の作品から、初めて読む人におすすめの3冊を紹介します。
最初にお断りをしておきますと、
クリスチアナ・ブランドは巧みな小説を書く作家ですが、後味が悪い作品が多いです。
その点はご了承ください。
パトリシア・ハイスミスと肩を並べる「イヤミス」女王ですね。
短編集『招かれざる客たちのビュッフェ』は名作がいっぱい!
『招かれざる客たちのビュッフェ』 創元推理文庫 深町眞理子訳 ¥1200+税
ひらいたかこの表紙絵が不気味でかわいい一冊。
緻密でトリッキーな絵柄。
ブランドのブラックさが表現されていてぴったりです。
ひらいたかこのイラスト集はミステリー作家が帯の文章を書いていましたね。
ディナーに見立てて収録作品を組み立ててある面白い趣向の短編集。
名作と名高い「婚姻飛翔」や『北村薫の本格ミステリー・ライブラリー』で知名度を上げた
「ジェミニー・クリケット事件」、「カップの中の毒」他が入っています。
本格推理から何とも言えない後味を残すものまで幅広い揃え方。
ブラック・ユーモアがさえる「メリーゴーラウンド」や軽率な少女が悲劇を巻き起こす「囁き」
などミステリーの範疇に入らないものもあります。
が、切れ味のよい短編小説であることに変わりありません。
盛りだくさんの逸品です。
絶版が多いクリスチアナ・ブランド作品の中で入手しやすいのもうれしい。
女性にとってはホラーより怖い 『猫とねずみ』
原題;「Cat & Mouse 」 1950年。
人気歌手引退の特ダネを取り損ねて転落、
少女雑誌の身の上相談を担当することになった女性記者カティンカ。
ふとした好奇心からウェールズ旅行のついでに、いつも投稿してくれる少女アミスタを訪ねていきます。
年上の男性カーライアンからプロポーズされた、と喜んで書いてきたアミスタ。
けれど、カティンカが訪ねたお屋敷で、カーライアンからそんな人物は存在しないと
言われます。
何かの間違い?と帰ろうとしたカティンカは広間でアミスタの封蝋のついた手紙を見つけてしまいます―。
アミスタは存在するのか、しないのか?
いるとすれば、誰なのか?
ウェールズを舞台に繰り広げられるゴシックロマンミステリーです。
ウェールズの自然描写や、土地特有の名字の考察が興味深い。
行動的なカティンカやひょうきんなチャッキー警部が時に明るくユーモラスな場面を作るものの、
小説の持つ雰囲気は暗いです。
このお話はどこをとっても女性にとても厳しい内容。
ただ、この物語の骨子は現代でも通用すると思います。
恋をする若い女性の盲目、それを利用する卑怯な男、謀略―。
恐怖と身につまされる要素が絡み合う、イヤミスの古典ですね。
恋愛感情を逆手にとられる…。女性にとっては恐怖ですよね。
作品世界の作りこみが面白い 『はなれわざ』
『はなれわざ』(ハヤカワミステリー文庫)宇野利奏訳
スコットランド・ヤードのコックリル警部が休暇でイタリア旅行へ。
ツアー客の面々はデザイナーや作家、元ピアニストの男性とその妻など多彩。
いつもの調子でツアー客たちを観察していたコックリル警部ですが、事件が起きてしまいます。
さっそくコックリル警部は捜査に乗り出しますが―。
架空の島国サン・ホアン・エル・ピラータを舞台に入り乱れる愛憎と打算。
様々な伏線とミスリード、ラストのどんでん返しは衝撃的です。
物語の背景となる島国の造形が見事。
クリスチアナ・ブランドが次作『ゆがんだ光輪』でも使用しています。
作者もよほど気に入ったのでしょうね。
『はなれわざ』『ゆがんだ光輪』と聞くと南海の島国が頭に浮かびます。
風光明媚な南の島で起きた悲劇。
イギリスが舞台の小説とは違った空気を持った名作です。
ま と め
『ハイヒールの死』『切られた首』『自宅にての急逝』『疑惑の霧』『緑は危険』
『ジェゼベルの死』『ゆがんだ光輪』、どれもそれぞれ面白いです。
が、今回は人間心理を緻密に描いたサスペンス色の強いものを中心にしてみました。
本格推理の、仮説の検討 → 否定 という繰り返しが冗長で
疲れるという人には向いていると思います。
ブランドはミステリー以外にも本を出しています。
マチルダばあやが活躍する児童文学、ゴシックロマンなどです。
『マチルダばあやといたずらきょうだい』 (あすなろ書房 2007)
『マチルダばあや、ロンドンへ行く』 (あすなろ書房 2008)
行儀の悪い子供たちをしつける、不思議な力を持つマチルダばあやのお話。
ユーモラスで痛快です。挿絵はブランドの従兄弟が描いています。
『領主館の花嫁たち』 (創元推理文庫 2016)
舞台は18世紀。ある領主館で起きる怪異。
かわいらしい双子の姉妹を教育するために館を訪れた家庭教師。
彼女にもまた、目に見えない力が、、、、。
様々なジャンルの作品を書いていたクリスチアナ・ブランド。
ブランドが人間心理に対して持っていた興味の深さがうかがえます。
お付き合いいただきありがとうございました。
参考にしていただけるとうれしいです。
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