松本清張 おすすめ短編集5選!【ドラマ化情報あり】

ミステリー

よく像化される松本清張の作品

時代を超えて読み続けられている名作がたくさんあります。

映像化で話題になるのは『砂の器』『けものみち』『黒革の手帖』『わるいやつら』など長編が多いです。

ちょっと手に取りにくいと思っていませんか?

実は松本清張は短編の名手。

長編もさることながら、短編にも名作はたくさんあります。

福岡県北九州市出身の松本清張。

社会派推理小説で有名ですが、実は芥川賞作家。

文学や歴史への造詣が深く、作品は多彩です。

質の高い短編集をたくさん出しています。

今回は、通勤や家事の合間にさっと読める作品集を集めてみました

ドラマ化・映画化されたものも多数。

気になるものがあったら手に取ってみてください。

目次をクリックすると好きな箇所に飛べます。

『黒い画集』は外せない!映像化作品がいっぱい

『黒い画集』には「遭難」「証言」「天城越え」「寒流」「凶器」「紐」「坂道の家」の7編が収録されています。

田中裕子主演で映画化された「天城越え」

のちに田中美佐子・二宮和也で映像化されました。

少年時代、家出をして一人で伊豆半島 天城峠を越えた男性の回想―。

旅の途中、美しく妖艶な酌婦(しゃくふ *1) ハナと出会ったことから思いもかけない展開に…。

(*! 酌婦とは料理屋などで、酒の酌などして客をもてなす女性のこと)

川端康成『伊豆の踊子』の舞台で起きる哀しい事件。

少年の孤独と鬱屈(うっくつ)、伊豆の自然、小さなきっかけで壊れていく日常。

ノスタルジーと推理小説の絶妙な融合。

一読、忘れがたい作品です。

「証言」は自己保身のために知り合いのアリバイを否定する話。

人間のエゴを鋭く描いた短編です。

こちらは2時間ドラマ化されています。

「坂道の家」はお金に細かい中年男性が水商売の女性にはまっていく様子がリアル。

ストーリーとトリックが絵にしやすいため何度もドラマ化されています。

特に1991年版は出色の出来。

出演はいかりや長介、黒木瞳、沖田浩之。

いかりや、黒木の熱演が見事。

黒木瞳が演じるりえ子は普段着姿で立っているだけで妖艶。

役の雰囲気を醸し出していました。

節約家だった雑貨店の店主が若い女性にのめり込み、お金を巻き上げられていく様子が真に迫っていて痛々しかったです。

「凶器」は意外な凶器もの。

よく海外の作品と比較される名作です。

東野圭吾『名探偵の掟』でも婉曲的に言及されていました。

『張込み』は「一年半待て」が白眉!

「張込み」「顔」「声」「地方紙を買う女」「鬼畜」「一年半待て」「投影」「カルネアデスの舟板」収録。

「張込み」「顔」「地方紙を買う女」「一年半待て」「鬼畜」は映像化されています。

「鬼畜」は野村芳太郎監督の映画版が有名ですね。

緒形拳、岩下志麻、小川真由美の熱演がなんとも恐ろしい。

岩下志麻が赤ん坊の口にご飯を詰め込むシーンは鬼気迫るものがありました。

後味の悪い作品ですが映画には独自の「救い」があります。

どれも味のある作品ばかりですが「一年半待て」は白眉。

昔、多岐川裕美・篠田三郎でドラマ化されました。

作品の雰囲気を壊さず2時間にまとめていて見ごたえがありました。

法律は諸刃の剣だということを再認識させられる短編。

『死の枝』はあの「家紋」が収録

『死の枝』には「交通事故死亡1名」「偽狂人の犯罪」「家紋」「史疑」「年下の男」「古本」「ペルシアの測天儀」「不法建築」「入り江の記憶」「不在宴会」「土偶」の11編が入っています。

タイトル通り、交通事故から精神鑑定、古書界や考古学、社会派的な題材と幅広く取り扱っています。

上記2つの短編集と比較するとややアイディア勝負で小粒な印象。

ですが、この短編集には怖い小説として有名な「家紋」が収録されています。

2002年、松本清張没後10年の特別企画で岸本佳代子、吹越満、泉ピン子、藤村志保という渋いキャストでドラマ化されました。

大筋は原作通りですが、脚色が多いです。

『家紋』は市原悦子による朗読CDが発売されています。

ちょろ
ちょろ

夜に聴くと眠れなくなるほどの名朗読です!

名女優で声優としてもメジャーだった市原悦子の上手さが光ります。

明治39年2月福井県で起きた実在の未解決事件「青ゲット事件」をもとに、松本清張が独自の推理で肉付けした作品。

細かい伏線と回収が見事です。

寒村の雰囲気、人間の「悪意」を抑えた筆致で描いた名作です。

「捜査圏外の条件」が収録されているのはこれ!

1989年 古谷一行主演でドラマ化された「捜査圏外の条件」。

両親を亡くし、ふたりで暮らしてきた兄と妹。

心臓に疾患を持つ妹が、旅先で死亡。

驚いた兄が駆け付けると、旅館の人たちから同伴者の男がいたことが告げられます。

妹を見捨てて逃げた男が許せない―。

彼がたくらむ悲しい完全犯罪。

7年にも及ぶ執念の復讐を妨げたのは?

流行歌が絡む、異色の一編。

原作では「上海帰りのリル」だったのを劇中は「神田川」にされていましたが、

それ以外は原作になかなか忠実でした。

収録されているのは『駅路』

収録作品は「白い闇」「捜査圏外の条件」「ある小官僚の抹殺」「巻頭句の女」「駅路」「誤差」「万葉翡翠」「薄化粧の男」「偶数」「陸行水行」の10編。

こちらも松本清張の博学多識がわかる作品集。

「陸行水行」は邪馬台国論争について書かれています。

表題作「駅路」もドラマ化されています。

行方不明男性の末路が悲しい作品。

「薄化粧の男」は登場人物のキャラクター造形が興味深いです。

被害者・加害者ともこんな人が周囲にいたら、と背筋が寒くなる一編。

実質上のデビュー作 『或る「小倉日記」伝』あらすじとドラマ化情報

 芥川賞を受賞した「或る「小倉日記」伝」

表題作他11編が収録されているのが『或る「小倉日記」伝』です。

収録作品は

「或る「小倉日記」伝」「菊枕」「火の記憶」「断碑」「笛壺」「赤いくじ」「父系の指」

「石の骨」「青のある断層」「喪失」「弱味」「箱根心中」

  処女作は「西郷札」なのですが、芥川賞受賞作で出身地北九州が舞台となっているためこちら

を出発点とする人が多いですね。

「或る『小倉日記』伝」のあらすじ

障害を持つ文学青年 田上耕作。北九州 小倉在住です。

彼が当時、散逸していた森鴎外 小倉時代の日記を地道な調査で再現しようとします。

徹底した情報収集、綿密な資料調査。

体が不自由な耕作を支えるのは、美貌の母親 ふじ。

美しい彼女には様々な誘惑がありましたが、すべて息子とその研究のため

断ってきたという経歴を持ちます。

母と息子が二人三脚で鴎外が小倉に滞在時を知る人たちを訪ね歩きます。

資料が増えるにつれ、病状が悪化する耕作。

志半ばに耕作は他界してしまいます。

その後、東京で鴎外の子息がタンスの中から小倉時代の日記を発見します。

「田上耕作が、この事実を知らずに死んだのは、不幸か幸福か分からない。」

という一文で幕を閉じます。

皮肉と悲哀に満ちた作品。

1993年、松本清張の一周忌にTBSでドラマ化されました。

主演は筒井道隆、母親役は松坂慶子でした。

今は亡き名優 蟹江敬三も出演していました。

さて、

田上耕作は実在の郷土史家です。

長らく、「或る『小倉日記』伝」が田上耕作の伝記のような扱いを受けていました。

が、実は松本清張の脚色が多いそうです。

阿刀田高の『小説工房12か月』にこのあたりのことが詳細に書かれています。

実像とかなり隔たりがあった様子。

より劇的に、より清張自身を投影できる設定に変更したようですね。

阿刀田高が推理小説さながらに考察を加えていてとても面白い一冊です。

興味のある方はご一読ください。

*阿刀田高『小説工房12か月』 集英社 2004年4月30日 第一刷発行

 そのほか「菊枕」も松本清張の出身地ゆかりの俳人にことよせた短編。

後年の作品とは違い、時々著者の素顔をのぞかせる興味深い短編集となっています。

長編のみならず、短編にも映像化作品の名作が多い松本清張。

原作を読んで映像化作品との違いを知るのも一興です。

お付き合いいただきありがとうございました。

参考にしていただけるとうれしいです。

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