高村薫『マークスの山』のあらすじは?映画版・ドラマ版との違い*ネタバレあり*

映画と原作

『マークスの山』は1993年に発表された高村薫の小説。

第109回直木賞受賞。

1993年の『このミステリーがすごい!』でも国内第1位を獲得しました。

現在、累計発行部数が100万部超え。

一世を風靡した大ベストセラーです。

私は発売当初に原作を読み、公開時に映画を鑑賞しました。

ドラマ版も視聴したのでご紹介します。

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高村薫『マークスの山』 あらすじは?

 東京都目黒区で起きた元暴力団員の殺害事件。

その後、別の区で法務省の役人が何者かに殺害されました。

被害者たちに共通点や面識はありません。

一見、別々に見えた2つの事件。

被害者の頭部に残された傷跡から同一犯による連続殺人事件の様相を呈してきます。

捜査に乗り出す警視庁捜査一課の警部補 合田雄一郎。

捜査が進むにつれて、なぜか上層部からの圧力が強くなります。

「マークス」と名乗る謎の青年 水沢裕之と事件の背後にあるものは?

 強烈な謎、ピリピリする警察組織の人間関係を綿密に描いた重厚な社会派小説。

日本人の、警察組織に対する理解を深めた良質な警察小説でもあります。

硬質な文章、重厚な書き込み、群を抜くリアリティ。

合田雄一郎シリーズの記念すべき第一作です。

『マークスの山』 映画版は1995年に上演

 映画版は1995年4月公開。

原作への熱気が冷めない頃に上演されました。

監督は崔洋一。

キャストは合田雄一郎を中井貴一、水沢裕之を萩原聖人、高木真知子を名取裕子が演じました。

ショッキングなシーンの連続、グロテスクな描写の多い作品。

さすが『十階のモスキート』『血と骨』の崔洋一監督といった印象。

雪山の凍てつく空気、学生運動などで不穏だった1970年代のバイオレンス描写は圧巻。

名取裕子の艶技に注目が集まりましたが、別の部分を評価してほしいところ。

分厚い原作を2時間でまとめるのは無理だったようで駆け足のような映画でした。

原作ファンは合田雄一郎に中井貴一がふさわしかったか議論が分かれました。

ちょろ
ちょろ

現在50歳以上の人間には中井貴一は『ふぞろいの林檎たち』の仲手川

もず
もず

まだイメージのついていない舞台俳優を起用すればよかったかもしれませんね。

萩原聖人の水沢はまさに怪演。

暗い生い立ちを持ち、精神を病んだ犯罪者を見事に体現していました。

一度観たら忘れられないですね。

wowow  連続ドラマW版『マークスの山』は独自要素が強い!

2010年に放送されたwowowの連続ドラマW枠で政策された『マークスの山』。

2010年10月17日〜11月14日まで全5話。

毎週日曜日22:00〜22:54

監督 水谷俊之

脚本 前川洋一

ちょろ
ちょろ

前川洋一は『OUT』や『空飛ぶタイヤ』など社会派の作品が得意な脚本家。

合田雄一郎を上川隆也、水沢裕之を高良健吾、高木真知子を戸田菜穂が演じました。

石橋蓮司、佐野史郎、石黒賢、相島一之、大杉連、小西真奈美、鈴木杏樹、

小日向文世という豪華キャスト。

制作に携わった東阪企画は少数精鋭のプロ集団。

今まで数々の名作ドラマを世に送り出した実績がある会社です。

時代の変化からか、時代設定を現代に変更。

長い原作をタイトにまとめた作りになっていました。

画面にショッキングな要素は少なく、抑えた表現が光る演出。

やや明るくクリーンな画面。

原作から暴力要素と学生運動の部分を差し引いた印象です。

お茶の間で観られることを考えてでしょうか。

質の高いドラマを輩出しているwowowだけあって緊迫感のある警察内部の様子、

謎に迫る緊張感があふれたサスペンスに仕上がっていました。

雪山での撮影は苦難の連続だったようですが、そのかいあって見事なドラマ。

高良健吾の水沢は映画版よりかわいらしく、観客に同情心を抱かせるキャラクターになっていましたね。

彼を庇護する看護婦 高木真知子との関係がほほえましく描かれて、悲劇的な部分を強調していました。

劇中、建設会社社長 佐伯を演じた佐野史郎。

追い詰められる演技は非常に印象的でした。

『ずっとあなたが好きだった』の冬彦のイメージが強いため、エキセントリックな役柄が多い佐野史郎。

実は抑えた演技でも存在感を出せる珍しい俳優なんですよね。

もず
もず

佐野史郎は主役よりわき役の方が実力を発揮できる俳優さん。

原作では出てこない合田の妻 貴代子が出てきたり、

原作では男性の役を女性が演じたり、映像化作品らしい改変が随所に見受けられました。

正直、鈴木杏樹が理系の研究者に見えるか?小西真奈美が記者に見えるかと訊かれたら「NO」です。

どちらも女優にしか見えません。

おふたりともモデル出身女優に見えます。(笑)

長い、ウエーブのかかった髪、おしゃれな服装。

いかにも、「男ばかりの画面なので華をそえました!」的な。

ですが、邪魔にはなっていません。

このさじ加減が絶妙。

骨太な高村薫の世界を見事に作りこんでいる上質な作品です。

結婚後、貴代子と合田の仲がぎくしゃくするエピソードに原子力発電の反対署名があります。

そのシーン、ドラマでしっかりと再現されていて原作への敬意を感じましたね。

何と言ってもWOWOWは作品の質を上げることに注力しています。

むやみにアイドルを起用せず、演技の出来る実力派で固めてあるので大人が観て楽しめる作品になっています。

ちょろ
ちょろ

高良健吾と戸田菜穂の演技がすごい!戸田菜穂は看護師に見えましたよ。

ちなみに、音楽を担当したのは澤野弘之。

緊迫感のある、非常にドラマティックな音楽。

映画版『自虐の詩』や『プラチナデータ』、劇場版『進撃の巨人』などでも音楽を担当している方。

WOWOWのオリジナルドラマは非常に贅沢です。

『マークスの山』の成功を受けて、同じスタッフで『レディー・ジョーカー』がWドラマ化されました。

反響のほどがうかがえますね。

2022年5月3日現在、ドラマ『マークスの山』と続編『レディー・ジョーカー』はU-NEXTで視聴できます。

初回なら31日間無料。

もちろん、いつでも解約できます。

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原作について  ネタバレ注意!!

 原作は昭和51年から平成初頭までの長期間にわたるストーリー。

雪山の自動車の中で起きた水沢一家無理心中事件、

岩田幸平による登山者殺人事件など様々な事件が絡み合います。

簡単に流れを押さえると

マークスと名乗る有名大学の山岳部5人仲間

(松井・浅野・林原・木原・佐伯の頭文字をとる)

が卒業後、雪山で同窓生だった野村久志の死体を遺棄したことが発端。

野村は高山病だったのですが、学生時代に木原といざこざがありました。

雪山で死亡したとなると自分たちが容疑者になると思ったマークスたちが

保身のために遺体を隠したのです。

もともと5人は裏口入学や不祥事など暗い秘密でつながっていた仲間。

単なる「仲良しグループ」ではなかったため、「死体遺棄」という暴挙に出てしまうわけです。

 10数年後、医者になっていた浅野ががんを患います。

死期が迫った浅野は良心の呵責から遺書をしたため、

当時の真相をすべて暴露します。

遺書は自室の収納棚に保管。

 そこに空き巣に入った水沢。

遺書を読んで激しい衝撃を受けました。

浅野の遺書を金目のものと一緒に盗んでしまいます。

遺書を読み、水沢はマークスたちに恐喝を行うこととなるのです。

雪山で一酸化中毒を起こし、無理心中の生き残りとなった水沢。

精神に障害を持ち、彼曰く暗い山と明るい山が繰り返す、

という状態。

「マークス」という名前に愛着を持ち、自ら名乗ることとなります。

遺書を盗まれた浅野は自殺。

水沢に殺害された人が5人、重傷者2名。

元暴力団員は林原に依頼されて水沢を始末しようとしたところ、

反撃に出られたわけです。

 被害の規模に比べて、元の事件はちょっと小さい。

こういう部分をドラマ版は、「改良」しているといえなくもないです。

最後、水沢は雪山で死亡してしまいます。

水沢を守り、かばってきた年上の看護師 高木真知子の

情愛が哀しい作品です。

『マークスの山』以後の合田雄一郎シリーズは?

 『マークスの山』以後も合田雄一郎シリーズは続いています。

『照柿』(1994)

『レディ・ジョーカー』(1997)

『太陽を曳く馬』(2009)

『冷血』(2012)

『我らが少女A』(2019)

『照柿』は出版直後の1995年にNHK BSでドラマ化されています。

合田雄一郎を三浦友和が演じました。

脚本は平成版『白い巨塔』の井上由美子。

気合が入っていますね。

『レディー・ジョーカー』は2004年に映画、2013年に『マークスの山』と同じくWOWOWでドラマになっています。

人妻に心奪われたり、義兄と不思議な関係だったり、部下の病気に気を配るも、袖にされたり。

苦悩しながらも職務に邁進するストイックな合田雄一郎。

合田雄一郎シリーズは名実ともに高村薫の人気シリーズと言ってよさそうですね。

ちょろ
ちょろ

ここまで読んでいただいて本当にありがとうございます!

少しでも参考にしていただけるとうれしいです。

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