谷崎潤一郎『猫と庄造と二人のをんな』あらすじと映画について

読書

谷崎潤一郎の小説『猫と庄造と二人のをんな』。

谷崎の関西物の代表的な作品です。

今回はこの『猫と庄造と二人のをんな』のあらすじと映画について

書いてみたいと思います。

『猫と庄造と二人のをんな』の概要は? 

昭和初期の神戸を舞台に繰り広げられる 一匹のメス猫と男女三人の喜悲劇。

 定職がなくぶらぶらしている三十男の庄造。

小太りの汗っかき、人当たりがいいだけが取り柄。

家業の荒物屋(雑貨屋のこと)は年老いた母親 おりんと妻 品子(しなこ)にまかせっきり。

甲斐性なしの庄造がすることといったら飼い猫のリリーをかわいがること、

玉撞き(ビリヤード)とカフェ通いだけ。

 庄造の母親 おりんとその兄の策略により、品子を追い出し、

素行に問題のある従妹 福子(ふくこ)が後妻の座にすわることになります。

商売が立ち行かなくなったおりんは、持参金つきの嫁が欲しい。

地元の名士であるおりんの兄は家出経験のある落ち着きのない娘を片付けたい。

両者の利害が一致して

庄造・品子夫婦を別れさせるという暴挙に出たわけです。

しかし、離縁された品子が交換条件に庄造の愛猫リリーを欲しいと言い出したことから

事態は思わぬ方向へ動き出します―。

 実はリリーをよく思っていなかったおりんと福子。

嫉妬も重なって渡りに船とばかりにリリーを品子に渡すように

庄造を責め立てます。

庄造は最初はのらりくらりとかわしていましたが、

福子が「リリーを品子へ譲らなければ自分が出ていく」と

言い出したことから折れます。

一方、品子はもともとリリーを嫌っていました。

打算でリリーをもらい受けたのですが

一緒に暮らすうちにリリーに情が移ります。

そして、妹の家に居候しながらリリーにかしずくように暮らし始めます。

ラストは品子の留守中、リリーに会いに来た庄造が

つかの間の逢瀬のあと、転がり出るように品子の妹宅から出てきて幕が下ります。

 谷崎潤一郎がフランスの作家 レイモン・ラディゲの小説『ドルジェル伯の舞踏会』に感銘を

受けて試行錯誤の末、生み出した本作。

心理主義的な小説で

猫好きにファンが多いです。

谷崎潤一郎自身が大の猫好きであったため、作中 猫のしぐさがリアル。

強い愛情を感じます。

登場人物はみな、一癖も二癖もあって読者の感情移入を許しませんが、

とにかくリリーが魅力的。

とても性質のいい、かわいいメス猫なんです。

『猫と庄造と二人のをんな』というタイトル通り、猫がヒエラルキーのトップです。

青空文庫にありますが、中公文庫版がおすすめ。

表紙が竹内栖鳳 触りたくなる きれいな子猫の絵です。

巻末の解説には庄造のモデルについて言及があります。

1956年公開の映画 原作との相違点は?

『猫と庄造と二人のをんな』は人気があって何度も映像化されています。

もっとも有名なものが1956年の映画です。

監督は豊田四郎

音楽が芥川也寸志

庄造 森繁久彌、品子 山田五十鈴、福子 香川京子、おりん 浪花千栄子という豪華キャスト。

山田五十鈴が、良妻で働き者なのに夫に疎まれる妻を好演。

香川京子の福子は原作よりも現代的。いつも流行歌を歌い、たばこをくゆらせる

けたたましい女性。

原作では和服を着ているのですが、映画では洋服。かなり活動的な印象です。

森繁久彌の庄造は気が小さいけれど小ずるい感じがよく出ています。

おりん役の浪花千栄子、勝ち気で意地の悪い姑をこれでもか!と強烈に演じています。

嫁 品子を追い出すときに満面の笑顔ってホラー。

セリフは原作の地の文をうまく使ってあります。

音楽を担当しているのは芥川龍之介の息子、芥川也寸志。

『八甲田山』『八つ墓村』『砂の器』など重厚でスケールが大きな曲が有名ですね。

この映画ではコメディーらしい軽妙な曲を提供しています。

作品にとてもマッチ。

肝心のリリーが和猫。

原作では西洋種のべっこう猫なのですが。

(このブログで使用している写真は海外のフリー画像サイトからべっこう猫を探してきました。)

白黒映画では「絵」的に難しかったのでしょうね。

べっこう猫では背景にまぎれてしまうんです。

大きな白いぶち猫に変更されていました。

ふっくらしたやわらないフォルム。白い毛がきれいで画面で映える猫でした。

玄人集団が谷崎の世界を見事に表現しているのでおすすめです。

若い方で白黒映画は観ないとおっしゃる方がいらっしゃいますが、もったいないと思いますね。

古くても風情のある、面白い作品はたくさんあります。

ぜひ、鑑賞していただきたいです。

お付き合いいただき、ありがとうございました。

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