映画『特捜部Q Pからのメッセージ』あらすじと感想*ネタバレあり

映画と原作

 デンマークが生んだベストセラー作家 ユッシ・エーズラ・オールスン。

世界的な大ヒット作『特捜部Q』シリーズの生みの親です。

2007年の『特捜部Q 檻の中の女以後、同シリーズは8作発表されています

世界的なヒット作だけあって本国デンマークで2013年から順番に映画化されています。

今回は第3作『特捜部Q Pからのメッセージ』(2009)を原作にした映画(2016)について書いてみたいと思います。

この記事を読むとこんなことが分かります。

映画『特捜部Q Pからのメッセージ』のあらすじ

映画のみどころ

原作との違い *ネタバレあり

スポンサーリンク

映画『特捜部Q Pからのメッセージ』のあらすじ

原題;『Flaskepost fra P』

デンマーク・ドイツ・スウェーデン・ノルウェイ合作

112分

監督;ハンス・ペテル・モランド

主演はデンマークの俳優 ニコライ・リー・カース

コペンハーゲン警察の地下にある、未解決事件を取り扱う部署 特捜部Q。

今回もまた、不思議な事件が持ち込まれてきました。

海辺を歩いていた一般人が拾った空きビン。

しっかりと封がされたボトルの中には手紙が入っていました。

血で書かれたように見える手紙の冒頭には「助けて」の文字が!

鑑識の調査によると手紙は7〜8年ほど前のもの。

年月と環境によって劣化したメッセージは読み取れない部分がほとんど。

ですが、送り主の名前は「P」ではじまることはわかりました。

特捜部Qのカール・マーク、助手のアサドとローサは捜査を進めますが、どうやら「P」は誘拐されたらしいのです。

そして現在、カール・マークたちの苦労を尻目に、狡猾な犯人は別の誘拐を企てていました

敬虔な新興宗教の信者家庭を狙った悪辣な犯行

警察に非協力的な被害者家族たち。

果たして、特捜部Qは犯人を逮捕し、被害者を救うことが出来るのか?

一刻一秒を争う戦いが始まります―。

映画 『特捜部Q Pからのメッセージ』のみどころ

カール・マーク役のニコライ・リー・カース、アサド役のファレス・ファレスの渋い演技が役柄に説得力を持たせています。

落ち着いた色調とカメラワーク。

昨今のハリウッド映画を観ていると目がチカチカする人には安心して鑑賞できる撮り方です。

普段、あまり触れる機会のないデンマークの景色や風俗。

特に今回は田園風景や海岸の様子が見られて興味深いです。

今まで過去の事件ばかりを追ってきた特捜部Q。

今回の映画では現在進行中の営利誘拐捜査にもかかわることとなります。

身代金受け渡しの列車シーンは迫力満点。

もず
もず

身代金受け渡しシーンはまるで黒澤明監督の『天国と地獄』。

スピーディな展開、アクションと人間ドラマ。

科学調査などは正直、アメリカドラマなどのファンには物足りません。

しかしながら、発想の妙とキャラクターの持ち味で独特な雰囲気を醸し出しています。

映画『特捜部Q Pからのメッセージ』原作との違い

 2021年8月現在、8作目まで出ている特捜部Qシリーズ。

その中で、唯一電子書籍でも上下巻あるのがこの第3作『Pからのメッセージ』です。

ボリュームだけでなく内容も質が高く、北欧ミステリの最高峰「ガラスの靴」賞を獲得しています

シリーズ最高峰という呼び声が高いです。

登場人物の名前が覚えにくく、しかも長編というと二の足を踏む方が多いのではないでしょうか?

ですが、非常によくできた作品です。

 映画はこの長編小説を2時間足らずに収めるため、筋の細部や登場人物を省いてあります。

日本の映画『64(ロクヨン)』のように前編・後編に分けるべきだったのでは?と思いますね。

原作にはデンマークならでは、のお国事情が出てきます。

そもそものきっかけとなるボトルの手紙。

原作ではスコットランドから持ち込まれます。

スコットランドの鑑識が、書かれている言葉が分からずに言語学者に相談。

そこから特捜部Qに来たわけです。

二国の鑑識の科学捜査、アサドとローサの努力から手紙の文章が解読されていく部分はリアリティがあって圧巻。

映画版ではあっさりと判読されていましたね。

また、犯人の犯行や動機、人物造形も随分と変更されていました。

小説版の犯人は非常に狡猾。

新興宗教の熱心な信者で、大家族・裕福・子だくさんという家族を標的にしています。

そしてたくさんの子供たちの中から、ちょっと異色な存在ともう一人を選び出して誘拐。

身代金が手に入ると特徴のある子は手にかけ、片方の子だけ解放します。

変わった子はいなくなったときに、残された家族が周囲に「家出した」「勘当した」「親戚の家に預けた」と言っても納得してもらえるから。

一人の子供は遺族に対するメッセンジャー。

警察に知らせたら、別の子供を狙うと知らせる役割です。

犯人が狙う宗教の信者は警察や一般社会とつながりを持ちたがりませんから、犯行は長年露見しなかったわけです。

このあたりは映画では詳細が語られていませんでしたね。

犯人は自分が狂信的な両親に育てられ、虐待されてきた過去を持つ男性。

小さな新興宗教団体の指導者だった父親と義父の理不尽な行為に少年時代をめちゃくちゃにされてしまっています。

そして見て見ぬふりをした母親。

時には自分を裏切った妹。

狂信者を減らしたい、犯人に復讐の機会を与えず自然死した父親を否定したい―。

そんな思いが根底にある、複雑な人物です。

映画版では自分を悪魔だと感じ、盲目になった妹のためにお金を稼いでいるような描写がありましたが、原作はもっと複雑。

兄と妹はお互いを利用しあっています。

 長年、複数の営利誘拐を成功させてきたため資金があります。

映画では描かれていなかったのですが、偽名で若く美しい妻と息子を持ち、一戸建ての家と高級車を乗り回しているんですね。

犯行に便利な場所で独身女性をひっかけ、泊めてもらうという人間を道具としか思っていない人物。

ちょろ
ちょろ

ひかえめに言っても「人間のクズ」ですね。

普段はj女性と知り合うと短期間だけ住居に宿泊させてもらうなど利用し、わざとひどいことを言って

別れていました。

今回は女性が頭がよくて兄が警察官だったことからほころびが生まれてきます。

このあたりの展開がおもしろいです。

確かに犯人の過去は悲惨。

父親の宗派が「笑い」を禁じていたため、娯楽が全く許されない環境。

犯人は少年時代、チャップリンのビデオ映画をみかけ、自室で真似をします。

つかの間の解放感。

妹を笑わせ、彼も得意になっていたのですが父親に見つかってしまいます。

「おまえの名前はチャップリンってわけだ。」

一度ならよかったのですが、その後また注意され大げんかに発展。

父親は漂白剤を振り回し、そのしぶきが目に入ってしまった妹は失明。

あまりの事態に父親は心臓発作で帰らぬ人になり、頼りにならない母親はまた狂信者と再婚―。

犯人にとって地獄の日々が続きます。

もず
もず

ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』でも修道院の長老が笑った修道僧を叱責するシーンがありました。

ちょろ
ちょろ

信仰は行き過ぎるとホラーです。

原作が非常に面白いのはこういった細部でリアリティを積み重ねているから。

犯人はたくさんの偽名を使って二重三重の生活をしているのですが、万が一、捜査の手が及んだ時のために「身代わり」まで用意している徹底ぶり。

操作を混乱させるために「にせの手がかり」すら用意している知能犯。

この犯人にカール・マークとアサド、ローサがどう戦うか?

上下巻、あっという間に読んでしまいます。

それにしても、映画版のカール・マークは本当に暗いですね。

原作では元相棒ハーディを自宅に引き取り、血のつながらない義理の息子とも同居。

ガールフレンドになりそうな人もいるカール・マーク。

不器用だけど人間らしいあたたかみのある人物。

どちらかというとエキセントリックな助手のアサドとローサに振り回されているのですが、

映画ではまるで逆。

一方、アサドはハッカの香りのするお茶やターキッシュブライト、甘いビスケットや父親譲りの敷物を一切排除。

シリアスでクールな捜査官になっていてファンとしては微妙です。

さて、犯人は終盤で趣味のボウリングから足がついてしまうのですが、このおまぬけっぷりがリアルですね。

結構、現実の事件でも思わぬ「趣味」で逮捕された犯人がいますし。

でもまあ、よく長いこと同じボウリングのキーホルダーを使っていましたね…。

この犯人、偽名ばかりを使っていたので最後まで名前が分かりません。

カール・マークに「おまえの本当の名前は?」と訊かれて

「俺の名前はチャップリンだ」と答えます。

犯人は確かに極悪非道。

ですが、最後まで父親の呪縛から逃れられなかったと思うとやるせない気分になります。

『特捜部Q Pからのメッセージ』は現在、Amazon prime videoで視聴可能。

初めての人であれば30日間無料でお試しができます。

もちろん、いつでも解約可能!

ちょろ
ちょろ

家事や仕事をしているとDVDの返却って結構、めんどうなんですよね。

Amazon prime videoの良いところは有料の商品をウォッチリストに入れていると、会員無料になったときに知らせてくれること。

これで観たかった作品を見逃さずに視聴できています。

オススメ。

もず
もず

Amazon prime videoは映画・オリジナルドラマ・アニメが楽しめてコスパのいいサービスですよね♪

お付き合いいただき、ありがとうございました。

少しでも参考にしていただけるとうれしいです。

よろしかったらこちらもどうぞ。

フランス映画の巨匠 ルネ・クレマン監督の映画について書いています。

映画『雨の訪問者』あらすじとネタバレ

同シリーズ『特捜部Q カルテ番号64』についての記事です。

『特捜部Q カルテ番号64』あらすじと原作との違い

タイトルとURLをコピーしました