貫井徳郎『愚行録』のあらすじと映画版の感想*ネタバレあり*

映画と原作

貫井徳郎の小説『愚行録』。

2006年に発表され直木賞候補となりました。

『慟哭』、『症候群』シリーズなど数々の優れたミステリーを書いてきた著者が贈る究極のイヤミス。

あらすじと映画版について語ります。

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貫井徳郎『愚行録』のあらすじ

 東京都練馬区氷川台。

閑静な住宅街で起きた一家殺害事件。

被害者は田向浩樹とその妻 友希恵と子供たち。

夫婦共に有名四年制大学出身。

エリートサラリーマンだった夫、美しい妻、かわいく行儀のよい子供たち。

感じの良い一家だったという彼らを手にかけた犯人は誰?

 作品はインタビュー形式で進みます。

近所の主婦、田向夫人の友人、元同級生、元同僚、元恋人。

彼らの証言から浮かび上がってくる田向夫妻の人物像は

それぞれ違っていて、、、、。

 原作の冒頭は新聞記事。

「3歳女児衰弱死 母親逮捕、育児放棄の疑い」という見出し。

田中光子容疑者(35)を保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕したというもの。

田向一家殺人事件にまつわるインタビューの間に

女性の独白が挿入されます。

彼女は誰なのか?

痛ましい女児衰弱死事件と田向一家殺害事件との関係は?

インタビュアーは誰なのか?

このあたりが主な謎になってきます。

貫井徳郎『愚行録』原作のネタバレ

 田向夫人の友希恵は

慶応大学の出身でした。

この大学は様々な小説で描かれているように完全な階級社会。

幼稚舎から入った内部生と

高校や大学から入った人との間には深い溝があります。

田向夫人は大学から入ったのですが、有名私立女子高の出身。

美貌と服装のセンス、外面の良さで内部生の仲間入りをします。

相当、気位の高かった彼女は

自分より目立つ外部生の足は引っ張ります。

彼氏を奪ったり、裏で貶めたり、相当な悪事を働いていました。

 使えるものは何でも使ってのし上がる―。

これは夫である田向浩樹も同じ。

煮た者同士だったわけです。

二人とも恨みは買っていました。

が、友希恵は出会った相手が悪かった。

自分より美しく、色気があり肉感的な外部生 田中光子。

世間知らずな彼女を、内部生の遊び相手としてあっせんしていたのですが

田中光子は事情を抱えた女性。

虐待されて育ち、底辺から這い上がるために猛勉強して慶応大学に入学。

なんとかいい家庭の男性と結婚したいと願っていたのです。

こういう女性、ぷちっと切れると何をするかわかりません。

 冒頭の新聞記事にあった育児放棄をした母親はこの田中光子。

インタビューの間にあった独白も彼女のセリフです。

つらい過去を持つ彼女は育児につかれていました。

ある日、街で田向夫人をみかけ、自分との違いに絶望。

家までつけて犯行に及んだわけです。

インタビュアーは田中光子の兄。

妹の犯行に気づいた彼はインタビューによって

田中光子の過去を知る人物を洗い出していたのです。

 厳しい境遇に育った兄妹の、哀しい愛情―。

人間というものの愚かさがなんともいえない作品です。

慶応大学(小説中はQと書かれていました)の階級社会を描いた桐野夏生の『グロテスク』。

この作品は貫井徳郎が描いた別の『グロテスク』とも言えそうです。

ちょろ
ちょろ

貫井徳郎はデビュー以来、読者に仕掛けるトリックが上手い作家。

イヤミスでもラストは面目躍如といったところ。

もず
もず

正直、『妖奇切断譜』みたいな作品は単発ですね。

 以前、深夜番組のゲストとして出演していた貫井徳郎。

非常にサービス精神のある、頭のよい方でテレビを観ていて楽しめた記憶があります。

そんなプロが「イヤミス」を書くと、とことん読後感が悪いものになるんだなあ、と実感。

また、日本人で一定年齢以上の人間には「練馬区」「一家惨殺事件」と聞くと思い出す実在の事件がありますね。

1983年に起きた、「練馬区一家5人殺害事件」です。

事件の衝撃と因果関係から多くの作家がこの一件を題材に小説を書いています。

有名なところでは映画化された野沢尚『深紅』、小野不由美『悪夢の棲む家』など。

親の見栄や強欲のため、幼い子供まで命を落としたところは『愚行録』のかぶりますね。

さまざまな要素が絡み合い、深読みできる作品になっています。

落ち込んでいる時には読まない方がいいですよ。

映画版『愚行録』 小説との違い

2017年公開。

キャストは妻夫木聡、満島ひかり、小出恵介、臼田あさ美、市川由衣、松木若菜、中村倫也、

濱田マリ、平田満ほか。

田中光子を満島ひかり、その兄を妻夫木聡、田向夫妻を小出恵介、松木若菜が演じています。

映画製作側は原作ファンが鑑賞する、という前提で作ったのでしょうか?

なぜなら、冒頭から一部ネタバレ。

関係者にインタビューをするのは妻夫木聡が演じる田中ですし、

満島ひかりが演じる光子は育児放棄で逮捕されています。

インタビュー形式の小説を映像化するのは難しいですからね。

 ただ、映像的な工夫は随所に凝らしてあり、

最後まで謎をひっぱる形にはなっています。

特筆すべきは田向夫妻のあくどさ。

小出恵介と松木若菜が見事な演技を披露していました。

妻夫木聡と満島ひかりは安定の芸達者ぶり。

この二人は映画『悪人』で犯人と被害者として共演していますが、

どちらも影のある役がうまいです。

妻夫木聡・満島ひかりはどちらも役によっては美貌を消し去れる、という特技を持っています。

このカメレオンっぷり。

すばらしい。

映画は終盤で、小説には直接登場しない田中兄妹の母親が出てくるなど

話を膨らませてあります。

とても後味の悪い作品ですが、

役者たちの演技は見事でした。

ちょろ
ちょろ

満島ひかりはなぜか、異常な兄を持つ妹の役柄が多いですね。

もず
もず

映画『DEATH NOTE』で月の妹、映画『愛のむきだし』で変人の義妹、ドラマ『それでも、生きてゆく』と舞台『ネジと紙幣』で殺人犯の妹などなど。

ものすごくきれいな女優さんだと思うのですが、薄幸な設定の役が多いですね。

蜷川幸雄の『ハムレット』でオフィーリアを演じたときにもはまっていました。

正統派な演技から、江戸川乱歩の明智小五郎までこなす満島ひかり。

目が離せない女優さんです。

一方、妻夫木聡は犯罪者から貴族のおぼっちゃままでこなせる幅の広い演技がいいですね。

『愚行録』映画版は2021年7月現在、Amazonプライムで視聴可能です。

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動画配信サービスはたくさんありますが、コストパフォーマンスが一番高いのはAmazonだとおもいますね。

お付き合いいただき、ありがとうございました。

参考にしていただけるとうれしいです。

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