映画『赤い影』のあらすじ 映画版と小説の違いなど

映画・ドラマの原作本

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ジュリー・クリスティとドナルド・サザーランドが共演した映画『赤い影』。

1973年制作、イギリス・イタリア合作です。

原作は『鳥』『レベッカ』『レイチェル』で有名なイギリスの女流作家ダフネ・デュ・モーリアの短編小説。

ヒッチコックに2作品映画化され、世界的に名声が響き渡りました。

もず
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映画監督にインスピレーションを与える作家ですね。

原題は『Don’t Look Now』(いま、見てはいけない)。

1966年に刊行されました。

 小品ながら強烈な印象を残す映像作品『赤い影』。

今回はこちらを紹介したいと思います。

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映画『赤い影』のあらすじと見どころ

 水難事故で幼い娘を亡くした夫婦 ジョン・バクスターとローラ・バクスター。

残された一人息子は寄宿舎に入れ、建築家であるジョンの仕事でヴェネツィアに行きます。

子供を亡くしたショックで沈んでいる妻を慰める夫。

運悪く滞在先のヴェネツィアでは殺人事件が起きています。

そんな中、バクスター夫妻はレストランで偶然に二人連れの老嬢と知り合います。

彼女たちが困っているところを助けたローラ。

実は二人は姉妹で、目の不自由な妹は霊能力があるというのです。

「私にはあなたの娘さんが見えます。

あなたの娘さんは幸せにしているから安心しなさい。

ただし、娘さんはあなたたちに警告しています。

早くここから立ち去りなさい」

「旦那さんには霊能力があるはず。

本人は気づいていないけれど」

亡くなった娘の服装まで当てられたローラは二人を信じますが、

夫のジョンは全く取り合わず、姉妹を詐欺師だと疑います。

ジョンとローラの心情がかみ合わなくなった時、アクシデントが起きてしまいます…。

 美しいヴェネツィアを舞台に、幻想と現実・過去と未来が交錯するサスペンスホラー映画。

フラッシュバッグ、カットバッグ、フラッシュフォワードを多用。

絶妙なバランス感覚を持つニコラス・ローグ監督の職人技でダフネ・デュ・モーリアの

奇妙で不安定な世界を可視化。

ドナルド・サザーランドとジュリー・クリスティの熱演が、忘れがたい逸品です。

監督の美的感覚、カメラマンの技術、ヴェネツィアでの根気強いロケが実を結んだ作品。

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ヴェネツィアの風景を見るだけでも価値があります。

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『赤い影』映画版と原作小説の違いは?

  映画では水難事故で亡くなったことになっているバクスター夫妻の娘クリスティン。

原作では病死です。重い髄膜炎でした。

クリスティンの服装が赤いコートというのも映画オリジナル。

原作では誕生会に着ていた青と白のドレスで女性たちの前に現れています。

赤はこの映画で重要な意味を持つ色ですね。

(小説では赤いコートを着ているのはローラ。重要な別のシーンで出てきます。)

 ジョンの職業が建築家というのも映画版のみ。

このため、協会や十字架、ステンドグラスなど宗教的なモチーフが無理なく画面に出てきます。

また、女性客二人は原作だと双子です。

その他、細かい相違点はたくさんありますが、主要なテーマは原作と同じです。

監督のコメンタリー再生で触れられていましたが、

ダフネ・デュ・モーリアは映画を観て、気分を害することはなかったそうです。

映像化のために細部を変更しても主題を外さなかったからでしょうね。

 原題『Don’t Look Now』は原作小説の冒頭に出てくるセリフ。

ジョンとローラはなんとか、日常生活を取り戻そうと昔のゲームをしているんですね。

レストランで見かけた人たちに勝手なストーリーを作るという子供じみたもの。

「ねえ、いま見ちゃいけないよ」

二つ向こうのテーブルにおかしな老嬢が二人いるけど、

あの人たちはなんだろう?

今、見ると露骨だから自然にちょっと見てみてよ、といったところ。

この言葉が、のちにジョンの持つ予知能力の間の悪さにもかかってきます。

二重の意味を持っているんですね。

映画『赤い影』のネタバレ

この先は映画・小説のネタバレを含みます。

ご注意ください。

*********************************

ローラとジョンが二人の老嬢のことでぎくしゃくしてしまった頃、

イギリスから連絡が入ります。

寄宿舎にいるローラとジョンの息子ジョニーが入院したという知らせ。

飛行機は1人分しか取れず、まずローラが帰国し、あとでジョンが追いかけることに決まります。

ジョンはローラを見送ったのですが、数時間後にサン・マルコの桟橋で海を見ていると

フェリーに乗ったローラと老嬢たちを目にします。

ローラがなぜか引き返してきた??

ジョンはヴェネツィア中を探し回りますが、ローラを見つけることはできません。

警察や大使館を巻き込んで大騒ぎ。

老嬢たちが誘拐したと騒ぎ立てますが、ローラはどこにもいません。

その夜、ジョンにイギリスにいるローラから電話がかかってきます。

ローラは無事に帰国し、息子は無事だというのです!

驚くジョン。

では、自分が見たのはいったい何?

その夜、ジョンはヴェネツィアの裏道で不穏な場面に出くわします。

赤いずきんをかぶった少女が男に追いかけられているのです。

もしや、この男が連続殺人犯?

ジョンは逃げる少女を助けようと追いかけます。

「大丈夫、心配しなくていい」と言いたくて。

ですが、

少女だと思っていたのは身長90㎝ほどのずんぐりとした女性。

にたにたと笑いながら、持っていたナイフでジョンを刺します。

この小柄な女こそ、連続殺人犯だったのです。

殺人鬼に刺され、ジョンは瀕死の状態で考え至ります。

ジョンがみたローラと老嬢たちはジョンの死後、明後日のこと。

ジョンの訃報を聞いてイギリスから戻ってきたときの光景だったと。

実はジョンには予知能力があったのです。

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映画 こぼれ話

 ニコラス・ローグ監督の映画解説を聞いていて面白かった部分は

この映画はホラーではないし、恋愛映画というつもりもないというところ。

愛する者の喪失と回復がテーマの映画として撮ったようです。

映画の中に原作にはないシーンで、観るものを困惑させる画面があるのですが(老嬢2人が爆笑するシーン。画面のつなぎから二人がバクスター夫妻をあざけっているように見える)監督は映画とは謎を残すもの、と思っている様子。

そのシーンについて解説はありませんでした。

また、ジョンとローラの夫婦はアメリカ人とイギリス人という裏設定にしてある、というところ。

同じ英語で話すけれど、深いところで考え方が全く違う―。

そういう国民性の差を意識したのだとか。

 映画に対してとても愛情と熱意を持っているローグ監督。

細部へのこだわりがわかる面白い解説です。

興味のある方はぜひどうぞ。

 さて、この映画の終盤、連続殺人犯とジョンが対峙するシーン。

これは後年、ダリオ・アルジェント監督 ジェニファー・コネリー主演の映画『フェノミナ』

(1985年)に似たシーンがありますね。

この作品が影響を与えたのかどうか知りたいところです。

 ローグ監督は原作者モーリアのことを、非常に影響力を持った作家だと語っています。

確かに2つの小説がヒッチコック映画の原作になっていますし、映画会社が顔色をうかがっていた

というのもうなづける話。

日本では谷崎潤一郎の『細雪』にもモーリアの『レベッカ』が出てきます。

世界的な人気作家ですね。

映像化したいと思わせる筋書き、人を惹きつける文章の巧みさ。

それがデュ・モーリアの魅力です。

 お付き合いいただきありがとうございました。

参考にしていただけるとうれしいです。

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