『特捜部Q 吊された少女』あらすじと感想

ミステリー

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デンマーク作家ユッシ・エーズラ・オールスン。

代表作『特捜部Q』シリーズは世界的なベストセラーです。

このシリーズは第1作『特捜部Q 檻の中の女』から第8作『特捜部Q アサドの祈り』まで刊行されています。

最終的には第10作まで書かれる予定だとか。

2023年3月現在、第5作『特捜部Q 知りすぎたマルコ』まで映画化されています。

同スタッフ・キャストが再集結し、第6作『特捜部Q 吊された少女』の映画が撮られる予定。

今回はこの『特捜部Q 吊された少女』のあらすじと感想を書いてみたいと思います。

『特捜部Q 吊された少女』あらすじ

  2014年4月29日火曜日午後1時半、特捜部Qのカール宛てに電話がかかってきます。

相手の名前はクレスチャン・ハーバーザート。

カールが一度、仕事で訪れたボーンホルム島の巡査でした。

退職を控えたハーバーザートは、地元で起きた未解決事件を調査してほしいとカールに頼みます。

カールはうたた寝していたところを電話のベルで起こされて不機嫌。

そっけない態度で応対すると、ハーバーザートは電話を切ってしまいました。

その後、意味深なメールが特捜部Qに届きます。

「特捜部Qが最後の希望だった。もう駄目だ。C・ハーバーザート」

メールを開封したローセはカールに電話をかけ直すように言いますが、つながりません。

次の日、特捜部Qにボーンホルム島ラネの警察署から電話がかかってきます。

なんと、ハーバーザートは退官式で演説した後、拳銃自殺。

驚いたローセは、罪悪感と責任感からカールをボーンホルム島に行くように急き立てます。

カールは飛行機が大嫌いですが、こうと思い込んだときのローセにはかないません。

特捜部Qの3人はすぐさまボーンホルム島に到着。

地元の警察に、もらったメールの話をするとあちら側は複雑な面持ち。

カールは渋々ながらハーバーザートの遺志をつぐことを説明するはめになります。

カール、アサド、ローセの3人はハーバーザードがかかわっていた事件の調査を始めます。

クレスチャン・ハーバーザートがライフワークにしていたのは、ある少女のひき逃げ事件。

事件の発生は17年前 1997年11月。

被害者は音楽や陶芸を学ぶ学校の女生徒アルバーテ・ゴルスミト。

自転車に乗っていたアルバーテは自動車とぶつかった衝撃で近くの木に宙づりになった状態で発見されました。

第一発見者はハーバーザート。

人口の少ない町での出来事。

すぐに解決すると思われていたのですが、犯人は不明。

事故は初動捜査が重要なことで知られています。

事故後、すぐに解決しなければ迷宮入りが常です。

早々にコペンハーゲンに帰ることができると踏んでいたカール。

ですが、ハーバーザートの息子ビャーゲに会いに行くとそこには彼の遺体と遺書らしき紙があったのです―。

敬虔なユダヤ教徒の家庭で育ちながら、奔放だった美少女アルバーテ

3人は彼女を取り巻く人間関係、ハーバーザートの複雑な家庭環境、古い事件の手がかりを追います。

果たしてただの交通事故だったのか、それとも計画的な殺人事件だったのか?

一方、スピリチャル団体〈人と自然の超越的統合センター〉にいる39歳の女性ピルヨは導師アトゥ・アバンシャマシュ・ドゥムジの心をとらえた女性を排除しようとやっきになっています。

アトゥの子供を産みたいピルヨは、彼に近づく女たちに対し非情の手段に出ますが―。

愛憎が絡み合う、蜘蛛の巣のように複雑な人間関係。

特捜部Qは17年前の事件を解決することができるのか?

 事件そのものはシリーズ史上最も地味ですが、

入り乱れた人間関係、サイドストーリーでラストまで引っ張られます。

『特捜部Q 吊された少女』感想

舞台はボーンホルム島。

実在する島ですね。

今回は被害者が若くて美しい国会議員だった第1作、デンマーク政財界の子弟を相手に立ち回る第2作のような派手さはありません。

17年前の少女ひき逃げ事件です。

さまざまなスピリチャル団体が出てくるのは、新興宗教団体を扱った『特捜部Q Pからのメッセージ』をほうふつとさせますね。

カールたちの捜査に並行してスピリチャル団体〈人と自然の超越的統合センター〉の内部が、

導師の右腕的存在ピルヨの眼を通して語られます。

自然と調和し、自分の内面と向き合うことを教える団体の内部。

詐欺すれすれの経済活動や欺瞞がはびこっています。

やや乱脈な男女関係に作者の皮肉な眼を感じますね。

こうした団体が生活困窮者や夢破れた女性たちのたまり場になっているというのはデンマークでよくあることなのかもしれません。

ユッシ・エーズラ・オールスンは社会的な問題をテーマにしてきた作家です。

現実を反映しているとみて間違いなさそうです。

特捜部Qシリーズは第1作〜第7作『自撮りする女たち』までKindle Unlimited読み放題対象作品。

本を買うより安いのでおすすめです。

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この小説は特捜部Qの面々が自分の過去に向き合う回となっています。

事情聴取に訪れた場所でカール・アサド・ローセは催眠療法を受けることになります。

情報提供者が「無料では話さない」というのでセラピー料金を払うことにしたんですね。

カールは飛行機恐怖症、ローセは記憶力の問題、アサドは彼にしか分からない問題。

それぞれ、心にわだかまりを持っています。

ローセにしてみれば経費で落とせるし、一石二鳥を狙ったのでしょう。

しかし、ローセは過去と向き合うことで精神的なダメージを受け、アサドは彼の正体にかかわる

事実が判明します。

謎ときとしては小粒ながら、シリーズを通して読むと起承転結の「転」となる作品。

ファンならば必読です。

単発ミステリーとして読んでも、ある意味「お手本」のような作品。

最初から読者には手がかりが全て提示されています。

証言、小さな証拠から仮説を立て、地道なアプローチで立証していくプロセスがリアル。

そしてラストにある「ひねり」。

職人技ですね。

 さて、コールドケースが再調査で解決するなんて実際にあるの?と思われる方がいらっしゃるかもしれません。

管理人は「ある」と思いますね。

というのも、迷宮入り事件を扱ったアメリカのドキュメンタリーによくあるんです。

Amazon prime videoで視聴できる番組。

その名も「迷宮事件ファイル」

迷宮入りと思われていた事件を最新のテクノロジーや新しい証言から再調査する、というもの。

この番組を観ているとささいな手がかりから解決する事件が多いのがわかります。

現在、シーズン2まで視聴可能。

アカデミー賞を獲った映画『スリ―ビルボード』をほうふつとさせる事件があります。

興味のある方はぜひ。

初月から解約できます

ま と め

『特捜部Q 吊された少女』は地味ながらシリーズ今後の展開に大きな影響を持つ巻。

ローセ、カール、アサドの過去が徐々にわかってきます。

特にローセ。

ハーバーザートが拳銃自殺する瞬間の映像を見たため、ショックを受けたローセ。

衝撃的だったのは「自殺」を目撃したことではなく、ハーバーザートがローセの亡き父親に似ていたことでした。

その衝撃がシリーズの今後に影響することになります。

アサドはストーリー始めからカールが驚くような銃器の知識を披露。

終盤には拷問にも耐えうるタフさ、身体を張って仲間を守る精神力の強さを見せます。

相当、悲惨な過去があったのでは?と推察できますね。

カールの周辺では従兄弟ロニーが死亡。

ロニーの強欲な兄サニーが登場し、カールを悩ませることになります。

ロニーから出たデマ 「ロニーが父親を〇害するときにカールが手伝った」。

これはロニーの妄想なのか、カールへの嫌がらせなのか?

はたまたフロイト的な解釈ができるのか?

『特捜部Q』の今後に目が離せませんね。

お付き合いいただき、ありがとうございました。

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