映画『特捜部Q 檻の中の女』あらすじと原作との違いについて

檻の中 映画・ドラマの原作本

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北欧の傑作ミステリー「特捜部Q」シリーズ。

原作小説はデンマークで2007年に刊行。

日本への紹介はやや遅れて第1作 『特捜部Q 檻の中の女』は2011年に出版されています。

『ミレニアム』と並ぶ北欧ミステリーの代表的な存在で、2013年には映画が公開されました。

小説は現在第8作『アサドの祈り』まで出版されています。

映画版は第5作『特捜部Q 知りすぎたマルコ』まで。

今回は『特捜部Q 檻の中の女』映画版のあらすじと原作との違いについて紹介したいと思います。

映画版『特捜部Q』シリーズはAmazon prime videoで第2作から第5作まで視聴できます。

シリーズの順番は次の通りです。

  1. 「檻の中の女」
  2. 「キジ殺し」
  3. 「Pからのメッセージ」
  4. 「カルテ64」
  5. 「知りすぎたマルコ」▲ここまで映画化
  6. 「吊るされた少女」
  7. 「自撮りする女たち」
  8. 「アサドの祈り」

映画版『特捜部Q 檻の中の女』のあらすじ

制作年2013年
原題The Keeper of Lost Causes
制作国デンマーク
監督ミケル・ノガール
キャストニコライ・リー・カース
上映時間96分
 

 コペンハーゲン警察 殺人課の警部補 カール・マーク。

ある日、相棒ハーディとアンカーとともに犯人のアジトに入ります。

応援を待たず、3人で強行。

思わぬ反撃にあってしまいます。

犯人の銃撃でアンカーは死亡、ハーディは脊椎損傷で再起不能、カールはケガを負い休職。

自分の判断ミスで優秀な相棒を2人失ったカールの精神状態は最悪です。

 早々に復帰したカールに殺人捜査課の課長は手を焼きます。

もともと、有能ですが偏屈なカール。

アンカー、ハーディ以外の刑事とうまく行きません。

殺人捜査課課長は迷宮入り事件の書類仕事をさせようと地下室に新部署「特捜部Q」を作り、カールを責任者にすえます。

早い話が厄介払いです。

助手はアサドというシリア系の男性だけ。

ふたりは5年前に自殺したと見られる若く美しい国会議員 ミレーデ・ルンゴーの事件を追うことになります。

調べていくうちに、ミレーデは誘拐されたと思われる状況証拠が出てきますが…

映画版『特捜部Q 檻の中の女』の感想

578ページの原作を96分にまとめた脚本家と監督の手腕には驚きます。

要点を押さえ、原作のエピソードを入れつつ、きれいにまとめていますね。

この時間で、カールのアマー島銃撃事件、別居中の妻 ヴィガ、その息子イェスパ、ハーディの存在まで盛り込んでいるのは称賛に値します。

キャストは個人の好みで意見が分かれると思いますが、ミレーデの弟ウフェは原作通り。

金髪で背が高く、ハンサム。

一見すると誰も事故による障害に気が付かない男性です。

また、ミレーデの子供時代はよく似た子役を探してきたなと感心しました。

原作のコミカルな部分を排除しているため、暗い印象の作品。

ですが、ミステリーとして楽しめます。

犯人の素性が分かった時には、息をのんだ人が多かったのではないでしょうか。

管理人は複数回観ていますが、結末を知っていてもハラハラしますね。

原作小説が好きですが、映画はまた別の切り口として堪能できました。

映画版と原作小説の違いについて

まず、登場人物について

カール・マーク

カール・マークは勤続25年の刑事。

端正で、高身長。

たくましい手を持つ体格の良い男性です。

こめかみにアマー島事件で負った傷があります。

家族は別居中の妻 ヴィガ、その息子 イェスパ。

映画版ではカールがヴィガに電話して切られていましたが、原作は逆。

カールは早く離婚したがっていますが、ヴィガが言を左右にしています。

原作小説ではカール宅には同居人 モーデンがいて家賃をもらっています。

陽気でさわがしいヴィガ、お小遣いをねだるイェスパがいるのでモーデンの家賃はありがたい様子。

結婚生活がうまく行かなかった男性としてはにぎやかですね。

殺人捜査課の課長いわく「めったにお目にかかれないほど優秀な捜査官」

原作ではミレーデ事件と並行して殺人捜査課の事件に首を突っ込み、解決に導いています。

ただし、疑り深い目をしていつも皮肉を言うため同僚からは煙たがられています。

ヘビースモーカー。

美しい女性が大好きで秘書課のリス、心理学者のモーナに軽口をたたきます。

50代のモーナを口説こうとするところを見ると年齢設定は40代半ばでしょうか。

ハーフェズ・エル・アサド

カールよりかなり年上で褐色の肌に大きな茶色の眼を持つ男性です。

小柄で小太り。

不平があるときには下唇を突き出すくせがあります。

『特捜部Q キジ殺し』ではカールが「適当な布をかぶせるとアラファト元議長そっくり」と評するしーんがあります。

整理整頓が得意で、事件資料には素早く目を通し、それを全て記憶する抜群の頭脳を持っています。

性格はおだやか。

手先が器用でお茶、コーヒーを淹れ、スパイシーなパイを焼いてくばる気さくな人物。

テレビの配線、自動車はもちろん、タクシー、トラックが運転できる万能ぶり。

どこでも衝突するカールとは違い、秘書や同僚と良好な人間関係を築いています。

聞き込み先では、カールの言いつけに背いて突っ走ることも。

職場には家族写真を飾るタイプ。

イスラム教徒で、お祈りのために敷物を持参しています。

カールがタバコをすうと煙を手であおぐ動作がよく描写されています。

ミレーデ事件ではインクで消した文字を復元してくれる知り合いに仕事を依頼するなど顔が広いところを見せています。

知られざる過去を持っているようで、名前も偽名では?とカールが疑う場面があります。

映画版アサドは原作ファンからするとワイルドで、カールに対する差し出がましい口ぶりがちょっと違和感を覚えますね。

(俳優ファレス・ファレスはやさしそうなのに…)

特捜部Qの成立

政府が出した「警察改革案」対策に、警察が新部署を立ち上げることから話が始まります。

管轄としてはコペンハーゲン警察の殺人捜査課に属する形。

「迷宮入り事件を扱う課」を作って国民にアピールしつつ、予算は殺人捜査課がいただく。

そんな打算から殺人捜査課課長と副課長が乗り気になります。

優秀だけれど周囲とうまく行かないカールを置いたら一石二鳥。

政治家・殺人捜査課課長・副課長の思い付きからできたんですね。

カール・マークは最初のうちは相棒を失い、殺人捜査課でぎくしゃくしたことから楽ができる特捜部Q行きを了承します。

毎日、机に座って数独をして暇つぶし。

仕事熱心なアサドに引っ張られて事件解決に力をそそぐことになります。

ストーリー

カールとアサドが挑むミレーデ・ルンゴー事件にしても、原作と映画版では違いがあります。

映画版では自殺と断定されていますが、原作ではあくまでも「失踪事件」。

前途有望、若く美しい女性が突然船の上から姿を消す―。

しかも最愛の弟を残して。

周囲はミレーデはすでに死んでいると思っていますが、謎は残っているんですね。

秘書、国会議員、家政婦など失踪前のミレーデを知る人々に話を聞き、小さな手がかりを元に事件を追っていきます。

一方、与圧室に監禁されたミレーデ。

こちらは「どうしてみんなに愛されていた若く美しい女性が監禁されなければならないのか」という謎があります。

ミレーデには心当たりがなく、犯人からたずねられても正解を答えることができません。

果たして、犯人の思惑は?

カールとアサドは生きているミレーデを救うことができるのか?

この2つが牽引力となって読者はラストまで引っ張られるわけです。

ネタバレを含む 原作と映画版の違い

細かい違いはたくさんありますが、大きなところ。

犯人の動機となった交通事故について。

【交通事故が起きたときの年齢】

●映画版 ウフェ8歳、ミレーデとラセはともにローティーン

●原作 ウフェ13歳、ミレーデ16歳、ラセ14歳

映画ではミレーデが隣の車にいた男の子に舌を出す。

その後、不幸なスリップ事故が起き、2つの自動車が横転。

原作では違います。

ミレーデとウフェが後部座席でけんか。

それをたしなめるために父親が意識を子供たちにむけた、その一瞬の油断で事故が起きています。

ミレーデの父親がイェンスン一家の車を追い越そうとしていた時でした。

姉弟けんかの原因はミレーデ。

ミレーデが父親の気を引くために弟にしつこくからんでいた、と隣の車から見ていたラセが話しています。

そして、ミレーデは自分が車の中を険悪な状態にしているにもかかわらず、隣の車にいたラセに笑いかけます。

全く罪の意識がない、無邪気な表情で。

ラセは今まで見たことがないほど美しい少女だと思いつつも、その無神経を苦々しく感じます。

その直後に起きた悲惨すぎる結末。

原作と映画版では被害者の数が違い、ラセの家族は父親が死亡、母親が両足の大やけど、双子の妹が死亡、

母親のおなかにいた双子の一人が死亡、一人が障害を負いました。

ラセ・イェンスンの母親は臨月。

家族全員で病院に向かっているところだったのです。

母親は事故のショックで出産、双子の息子の一人は死亡、ひとりはへその緒が首に巻き付いて窒息しかかり、一生残る障害を負いました。

ラセがミレーデを長い時間監禁することにこだわったのには理由があります。

ラセ一家はミレーデを監禁しておく期間を「5年2ヶ月13日」と決めていました。

事故直後からラセが成人し、なんとか家族が一緒に暮らせるようになるまでの年月。

事故が起きた後、ラセの母親は入院し、ラセ自身は里子に出された先で虐待を受けた。

生き残った弟は障害のため一度も学校に行けず、家族全員が地獄の苦しみを味わった年月でもあります。

原因となったミレーデに同じ時間苦しんでほしい―。

犯人たちの執念がわかりますね。

ミレーデを監禁する檻が与圧室なのは、ラセの父親が経営していた会社の製品をテストする際に使っていたから。

父親を尊敬していたラセは全てを奪ったミレーデをそこに閉じ込めることで罰を与えようとしたんですね。

映画版ではラセと母親しか出てきませんが、

実際にはラセの、障害を持つ弟も事件に加担しています。

原作では監禁されたミレーデに一番つらく当たるのはラセの母親。

ラセの母親 ウラ・イェンスンは夫亡き後、ルンゴー基金(ミレーデと弟が立ち上げた基金)に援助を申し込んで断られた経験があります。

ミレーデへの恨みは息子以上なんですね。

ラセの母親に対してはミレーデも対抗し、ハンストをしたり、悪態をついたりします。

虫歯を抜いた後の血を窓に塗って外から中を見えないようにする場面は映画にもありましたが、言い争いをしたのはラセではなく母親。

ミレーデの要求に対し、バカにしたような笑い声をあげるなどぞっとするシーンが続きます。

映画版だけを見るとラセ一家は交通事故についてミレーデを逆恨み・八つ当たりしているように見えます。

原作ではもう少し犯人側に同情できる設定になっています。

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同様のテーマを扱った映画

『特捜部Q 檻の中の女』は復讐の物語。

復讐というと、当事者を亡き者にしたり、愛する家族を不幸にしたり、と古今東西さまざまなバリエーションがあります。

『特捜部Q 檻の中の女』と共通する、一風変わった復讐ものには次のような作品がありますね。

この漫画は韓国で映画化されました。

設定は変更点が多いですが、興味深い映画でした。

▼アルゼンチン映画の傑作。

ハリウッド映画『シークレット・アイズ』のオリジナル。

オリジナルの方が100倍いいので観ていない方はぜひ、どうぞ。

お付き合いいただき、ありがとうございました。

『特捜部Q』シリーズは現在、Amazon prime videoで視聴できます。

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