【2023年新刊】ジョアン・フルーク『ココナッツ・レイヤーケーキはまどろむ』あらすじと感想

ミステリー

  【このブログではアフィリエイト広告を利用しています】

お菓子探偵ハンナシリーズ第23弾。

『ココナッツ・レイヤーケーキはまどろむ』が2023年1月13日に発売されました。

ここ数作は衝撃のラストで話題沸騰のハンナシリーズ。

新作が待ち遠しいファンが多いのでは?

さっそく、あらすじと感想を書きたいと思います。

1年に1度の出版なので前作のストーリーを忘れてしまった、という方はこちらをどうぞ。

【2022年 最新刊】ジョアン・フルーク『チョコレートクリーム・パイが知っている』あらすじと感想

『ココナッツ・レイヤーケーキはまどろむ』あらすじ

前作『チョコレートクリーム・パイが知っている』のラストから数日後。

いつも通り、ハンナが経営するクッキー店で朝の仕込みをしていると義父で医師であるドク・ナイトから電話がかかってきます。

至急、病院へ来てほしい。

会って話したい。

それだけで電話を切られてしまいます。

ロスの子供を妊娠しているかも…と悩んでいたハンナ。

どうして電話で検査結果を教えてくれないの?と気が気ではありません。

もしかしたら、重篤な病気がみつかった??

悪いことばかりを考えてしまいます。

レイク・エデン病院に着くとオフィスに通されたハンナ。

ふたりっきりになるとドクは検査結果を知らせます。

ハンナはロスの子供を妊娠してはいませんでした。

ただ、ドクはハンナが極度のストレスにさらされていると指摘。

気分転換で旅行へ行くように勧めます。

ちょうど、ハンナの友人で女優のリン・ラーチモンドがレイク・エデンのコンドミニアムを購入することになったところ。

リンは今いるカリフォルニア州からミネソタ州に引っ越してくることになります。

ついてはハンナの母親ドロレスとハンナで引っ越しのお手伝いに行くといい―。

バレンタインデー前の〈クッキー・ジャー〉は繁忙期。

ですが、ドクは共同経営者リサと相談してすでに助っ人2名を手配済み。

ハンナの愛猫モシェは末の妹ミシェルが面倒をみる、と細かいところまで準備が整っているんですね。

ハンナはおとなしく周囲の人々の好意に甘え、カリフォルニア州ロサンゼルスに行くことにします。

 毎年、レイク・エデンで雪と寒さに震えていたドロレスとハンナ。

南の州、しかも映画の街では興奮が隠せません。

友人リンはふたりを運転手つきのリムジンでお迎えしてくれるし、宿泊はリンの豪邸。

豪華なシャンデリアにいくつもある客室、よく働く親切なお手伝いの人々。

リンの好意で連れて行ってもらったCMスタジオ。

すっかり日常から離れたハンナは華やかな空気を満喫していたのですが、

留守番のミシェルから一本の電話がかかってきます。

ミシェルのボーイフレンド ロニーが殺人事件の第一容疑者になったというのです!

とんぼ返りを余儀なくされたハンナは、またもや捜査に乗り出すのですが…。

惹句は

「前代未聞の事件!

担当刑事がだれもいない?どうする、ハンナ!?」

です。

ちょろ
ちょろ

ハンナ、日本人なら周囲に「一度、お祓いしてもらえ」って言われますね。

『ココナッツ・レイヤーケーキはまどろむ』軽いネタバレと感想

とりあえず、長年のファンがほっとしたこと。

ハンナ、妊娠してなくてよかった!

女性の生き方が多様化する今日(こんにち)、シングルマザーになるのはいいんですよ。

ハンナは手に職はありますし、近所には手助けしてくれる母親や妹たちがいるし。

ですが、ロスは重婚者で暴力的でお金にも汚くて、最後はハンナをののしったり脅したりしていましたからね。

ロスの子供が生まれていたら、かなり複雑な心境になったと思います。はい。

日本人ファンの多くは、遠いミネソタを舞台にした非日常的なコージーミステリーを望んでいるのに

シングルマザー奮闘記になったらちょっと。

 さて、事件。

ハンナの末妹ミシェルのボーイフレンド ロニーは保安官助手。

高校時代の友人 ブライアン・ポリンスキーとその妻キャシーに会いに酒場〈ダブル・イーグル〉を訪れます。

手みやげには〈クッキー・ジャー〉のココナッツ・レイヤーケーキ。

この日はキャシーの誕生日だったんです。

ブライアントキャシーは仲の良い夫婦だったのですが、度重なる流産で関係がぎくしゃくした時期がありました。

一時は別居。

その二人がよりを戻したのですから、優しいロニーは祝いたい気分でいっぱい。

好きでもない酒場に出かけたわけです。

〈ダブル・イーグル〉でロニーは高校時代のクラスメイトたちに偶然出会います。

そのうちの一人、ダーシーはちょうど彼氏とけんか別れして店に置き去りにされてしまいました。

お酒に酔っているのか意識がもうろうとしているダーシー。

しかも、同級生のウエイトレス ケイの話によるとダーシーは車もなく、連れて帰ってくれる人もいません。

仕事に誇りを持っている、人の好いロニーは放ってはおけません。

彼女を家に送り届け、ベッドに寝かせます。

家に帰ろうとしたところ、

なぜか?ロニーをはげしい睡魔が襲います。

つい、ダーシー宅のカウチで一晩明かしてしまうことに。

次の日、朝のあいさつをしようとダーシーの部屋をのぞいたロニーは

ダーシーの遺体を発見してしまうのです!!

今回、保安官助手のマイクはロニーの捜査を担当することができません。

保安官事務所の規則で、相棒の事件は扱えないんですね。

ちょろ
ちょろ

冷静な判断ができなくなるので、日本でも身内の事件は担当できませんよね。

めずらしく、マイクから請われて捜査に乗り出すハンナ。

すぐに妹アンドレアの働きでダーシーの秘密を知ることになります。

一方、まだまだ「真実」がはっきりしないハンナの元夫(のようなもの)ロス。

彼が借りていた貸金庫にはスーツケースが入っていました。

ハンナとマイク、ノーマンは中身を確認するのですが…。

 ここ数作、怒涛の展開だったのでちょっと一息つけるのがうれしい。

冒頭のカリフォルニア州ロサンゼルスの描写も気分が変わって楽しく、長年のファンなら観光気分で楽しめると思います。

トラブル続きでストレスフルなハンナを気遣う周囲の人たち。

殺人事件が起こっていても、あたたかく穏やかな世界観。

甘いお菓子とお料理のレシピ。

今回はスロークッカーを使ったミネストローネのレシピがあって、これは大量に作れて重宝しそう。

もず
もず

鶏肉料理・ライス料理もスロークッカーレシピが載っています。

スロークッカー、欲しくなってしまいますね。

思わず検索してしまいましたよ。

アイリスオーヤマのだったら安いな…。

オーブンを使わずに作ることが出来る「チョコレートサラミ」は簡単で美味しそう。

ところで、ロサンゼルスの大邸宅でリンがハンナにシャンパンをすすめるのですが、

それがヴーヴ・クリコ。

未亡人のシャンパンですね。

古今東西、女性作家はこのシャンパンをヒロインに飲ませるのがお好きなようで

日本では桐野夏生が村野ミロシリーズで使っていた記憶があります。

そういえば、ハンナも村野ミロも未亡人(ハンナは?マーク付き)ですもんね。

(元配偶者が●ズってところまでいっしょ)

今回は最近、活躍が少なかったアンドレアがたくさん出てきます。

彼女が好きなファンにはとてもうれしいと思いますね。

今作は終盤に長年のファンをドキッとさせる部分があって、本当に驚いてしまいました。

ジョアン・フルークって本当はかなり人をひっかけるのが好きなんじゃあ…。

お菓子探偵ハンナシリーズの順番

 今回で23作になったお菓子探偵ハンナシリーズ。

日本に紹介されたのは2003年。

出版社を変えて長く続いているシリーズです。

ここで順番に並べてみましょう。

【お菓子探偵ハンナシリーズ 作品一覧と出版年】

①『チョコチップ・クッキーは見ていた』(2003年3月)

②『ストロベリー・ショートケーキが泣いている』(2003年8月)

③『ブルーベリー・マフィンは復讐する』(2004年2月)

④『レモンメレンゲ・パイが隠している』(2004年10月)

⑤『ファッジ・カップケーキは怒っている』(2005年6月)

⑥『シュガークッキーが凍えている』(2005年12月)

⑦『ピーチコブラ―は嘘をつく』(2006年10月)

⑧『チェリー・チーズケーキが演じている』(2007年10月)

⑨『キーライム・パイはため息をつく』(2008年9月)

⑩『キャロット・ケーキがだましている』(2009年10月)

⑪『シュークリームは覗いている』(2010年10月)

⑫『プラムプティングが慌てている』(2011年9月)

⑬『アップルターンオーバーは忘れない』(2012年10月)

⑭『デビルズフード・ケーキが真似している』(2013年10月)

⑮『シナモンロールは追跡する』(2014年10月)

⑯『レッドベルベット・カップケーキが怯えている』(2015年10月)

⑰『ブラックベリー・パイは潜んでいる』(2016年10月)

⑱『ダブルファッジ・ブラウニーが震えている』(2017年11月)

⑲『ウェディングケーキは待っている』(2018年11月)

⑳『バナナクリーム・パイが覚えていた』(2020年1月)▲ここで出版社が変わる

㉑『ラズベリー・デニッシュはざわめく』(2021年1月)

㉒『チョコレートクリーム・パイが知っている』(2022年1月)

㉓『ココナッツ・レイヤーケーキはまどろむ』(2023年1月)

こう書いてみると本当に長いですね。

第一作で生まれた子供が今は20歳になっている…。

最初の頃は1年に2回も出ていたんですね。

このシリーズもいろいろありましたね。

ハンナがレシピ本を出したり、レイク・エデンで映画が撮影されたり、ハンナの母親が作家デビューしたり。

今の展開を見ていると初期の「マイク浮気疑惑」とかかわいいもんです。(笑)

今も昔も、洋の東西を問わず

シリーズの途中で主人公が変わったり、ファンが思っても見ない方向に行ったりする作品は結構あります。

ちょろ
ちょろ

安吾捕物帳、『検屍官』シリーズ、杉原爽香シリーズなど。

ハンナシリーズは作者がしっかり手綱をしめて、バランスを取って回しているなって思います。

また、来年まで待ち遠しいですが、

ここまで付き合ってきたのですから気長に待ちましょう!

お付き合いいただき、ありがとうございました。

▼お菓子探偵ハンナと同じく、ロマンスとミステリーの融合した歴史的名作

▼若き日の有栖川有栖作品。みずみずしい。

『完璧すぎる結婚』に驚嘆!あらすじと感想【海外ミステリー】

タイトルとURLをコピーしました