ガルシア=マルケスのおすすめ小説3選【ノーベル賞作家】

砂漠とサボテン 文学

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 ノーベル賞作家のガブリエル・ガルシア=マルケス。(1928〜2014)

コロンビア出身の小説家で元ジャーナリストです。

代表作は『百年の孤独』『族長の秋』『迷宮の将軍』『コレラの時代の愛』他。

日本では架空の都市マコンドを舞台にした、ある一族の始まりと終わりを描いた『百年の孤独』が有名ですね。

コロンビアのみならずラテンアメリカ文学界の代表的な存在。

『百年の孤独』『コレラの時代の愛』など代表作に長編が多いため、手を出しにくいと思われているかもしれません。

実は読みやすいく、たのしめる作品はあります。

今回は、ガルシア=マルケスの初心者におすすめできる本をご紹介したいと思います。

ちょろ
ちょろ

目次をクリックすると気になる部分に跳べます。

ガルシア=マルケス エレンディラの物語は残酷で美しい

 ちくま文庫から出ている『エレンディラ』。

『純真なエレンディラと邪悪な祖母の信じがたくも痛ましい物語』という中編小説のタイトルから来ています。

タイトルが長すぎますね。

訳者あとがきで木村榮一が「便宜上短く『エレンディラ』と変えさせていただいた」と断りを入れています。

ちくま文庫版は表題作以外に

6編の短編が収録されています。

「大きな翼のある、ひどく年取った男」

「失われた時の海」

「この世でいちばん美しい水死体」

「愛のかなたの変わることなき死」

「幽霊船の最後の航海」

「奇跡の行商人、善人のブラカマン」

もず
もず

「この世でいちばん美しい水死体」はアンソロジーにも収録されていて有名。このタイトルに触発された(?)海外ドラマのサブタイトルがありましたね。

「大人のための残酷童話集」と称されるように愛と死のイメージが強い短編集です。

どの作品も映像が目に浮かぶよう。

しかもシュールで美しい―。

海底の街、海に流される死者の背後に続く花々、神出鬼没の天使などなど。

ラテンアメリカ文学特有の、幻想と現実が地続きになった不思議な感覚が堪能できます。

『百年の孤独』と『族長の秋』にはさまれる形で出版された短編集でガルシア=マルケスの魔術的な文章がいかんなく発揮されています。

現実と地続きに起こる不思議な事件。

一度読んだら忘れられない作品ばかりです。

ちょろ
ちょろ

「大きな翼のある、ひどく年取った男」は天使(?)の話なんですが、扱われ方がひどい!

もず
もず

羽の裏側にフジツボがついている、それを鶏がつつくというのが妙に忘れられません。

「エレンディラ」の物語は非情な祖母にこき使われ、搾取されつづけた孫娘の様が本当に残酷です。

が、文章が織り成す絵画的な要素が本当に美しいのでおすすめ。

最後まで読むと印象が変わります。

自分に合うかわからないから買うのはちょっと…と言う方には

Kindle Unlimited読み放題がおすすめです。

月額980円で200万冊が読み放題になるサービス。

ガルシア=マルケスの短編集が読み放題対象作品に入っています。

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収録作品は以下の26篇。

初期・中期・後期に発表された3冊の短編集からとられているので作家の全貌がわかるところがおすすめポイントです。

【収録作品一覧】

  • 第三のあきらめ
  • 死の向こう側
  • エバは猫の中
  • 三人の夢遊病者の苦悩
  • 鏡との対話
  • 青犬の目
  • 六時の女
  • 天使に待ちぼうけをくわせた黒人、ナボ
  • 誰かが薔薇にさわった
  • 鴫(しぎ)の夜
  • イサベルの独白 マコンドに振る雨を眺めながら
  • 火曜日の昼寝
  • 最近のある日
  • この村に泥棒はいない
  • バルタザールの素敵な夕暮れ
  • モンティエールの未亡人
  • 土曜日の次の日
  • 造花の薔薇
  • ママ・グレンデの葬儀
  • 大きな翼を持った老人
  • 失われた時代の海
  • 世界で最も美しい溺死体
  • 愛のかなたの不変の死
  • 幽霊船最後の航海
  • 善人ブラカマン、奇蹟の行商人
  • 純真なエレンディラと非情な祖母の信じ難くも悲惨な物語

作品のタイトルを並べただけでも詩的でおもしろそうなところがガルシア=マルケスらしくていいですね。

作品解題、解説付き。

【関連記事】Kindle Unlimitedで読める!おすすめの小説・エッセイ

『予告された殺人の記録』巧みな構成に酔う!最高傑作との声も…

 ある作家のエッセイに出てきた笑い話。

『予告された殺人の記録』がある図書館でミステリーコーナーに分類されていたらしいです。

アガサ・クリスティに『予告殺人』がありますからね。

図書館あるあるです。

こちらは、幻想的な『エレンディラ』とは異なり、実在する事件をもとにした作品です。

もともと、ルポルタージュ(取材された現地報告)として書かれる予定だったとか。

ガルシア=マルケスの家族が住んでいた地域で実際に起きた殺人事件を、関係者たちの証言で再構築。

5章からなる巧緻な中編小説です。

街をあげての結婚披露宴。

新郎新婦は、非常に裕福なよそ者の男性バヤルド・サン・ロマンと町娘アンヘラ。

熱気が冷めやらぬその直後、街の若い男性サンティアゴ・ナサールが刺殺された―。

発生前から犯人がわかっていた、という異例の出来事。

どうして起こったのか?なぜ避けられなかったのか?

 明るく陽気な男性がなぜ悲惨な最期を迎えたのか?

街の女性たちから好意的に見られていたサンティアゴ・ナサール。

彼が惨殺死体となるまでの経緯はいかに?

絡み合う愛憎と人間関係、多くの人々の思惑。

緊迫した雰囲気。

構成が非常に凝っていて引き込まれます。

ガルシア=マルケスの作品としては短い物ですが、内容は濃いです。

アンヘラとバヤルド・サン・ロマンの愛など『コレラの時代の愛』に引き継がれる要素がありますし、おすすめです。

ガルシア=マルケスはこの小説を自身の「最高傑作」と呼んでいたそうです。

『わが悲しき娼婦たちとの思い出』 作家によって方向性がこんなに違う!

 2004年に発表されたガルシア=マルケス最後の作品。

 90歳を迎える老人「物知り博士」の恋のお話。

誕生日にうら若き乙女と過ごしたい、そんな突拍子もないことを考えた老人男性。

知り合いの娼家の女主人に電話を掛けますが…。

エピグラフに川端康成の『眠れる美女』の一節があげてあります。

たしかに、老人男性と少女という組み合わせ、話の発端は似ていますが読後感は反対。

夜と死のにおいのする川端康成作品とは逆に「生」と「恋」に発展していくのがガルシア=マルケス。

両者の違いが面白いです。

90歳を節目に、人生を転換させる老人―。

ガルシア=マルケスの描く人々は最後までパワフルでした。

ラテンアメリカの明るさと力強さに感服する一冊です。

川端康成の『眠れる美女』とあわせて読むと、より理解が深まります。

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ま と め

 若い頃、映画を学んでいたガルシア=マルケス。

彼の作品は魔術的でかつ絵画的。

エレンディラのちぎられた洋服がリボンになったり、サンティアゴ・ナサールの夢が目に浮かんだり。

ストーリーだけでなく様々な楽しみ方があるガルシア=マルケス作品。

たしかに長編が多いのでハードルが高いです。

また、ラテン・アメリカの人物名は日本人にとってちょっとなじみにくいです。

ですが、一度はまると抜けられない魅力があります。

短編が気に入ったらぜひ、『百年の孤独』『コレラの時代の愛』のような長編を読んでみてください。きっと面白いと思いますよ。

冒頭から惹きつけられます。

ビター・アーモンドを思わせる匂いがすると、ああ、この恋も報われなかったのだなとつい思ってしまうが、こればかりはどうしようもなかった。

木村榮一訳『コレラの時代の愛』(新潮社)
ちょろ
ちょろ

51年9カ月4日、恋人を待ち続けた男性フロレンティーノ・アリーサのお話。

もず
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2007年に映画化されています。恋人フェルミーナ・ダーサ役の女優さんがきれいでした。

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ちょろ
ちょろ

ガルシア=マルケス原作の映画は日本未公開が多いのでありがたいですね。

ちなみに宮崎県の有名な焼酎に「百年の孤独」というものがあります。

製造元の黒木本店の方がガルシア=マルケスの大ファンだったそうです。

コロンビアまで飛んで、ガルシア=マルケスご本人に名前を使用する許可をもらったというからすごい!

今上天皇陛下が皇太子時代にご購入されたことで一躍知名度が上がりました。

ガルシア=マルケスは意外と身近なところにまで影響がありますね。

ガルシア=マルケスを楽しめたら、次はほかのラテン・アメリカ文学に触れてみてください。

メキシコの作家 『ペドロ・パラモ』で有名なフアン・ルルフォ、フエンテス、アルゼンチンの作家ボルヘスなど。

それぞれに独自の世界を築いています。

日本の小説、日本人が読みなれた欧米文学とはまた違った味わいを持つラテンアメリカ文学。

ぜひ、手に取ってみてください。

お付き合いいただき、ありがとうございました。

参考にしていただけるとうれしいです。

2022年7月上旬には河出書房新社から『ガルシア=マルケス中短編傑作選』が出版されました。

▼この単行本の文庫版。

収録作;「大佐に手紙は来ない」「火曜日のシエスタ」「ついにその日が」「この町に泥棒はいない」「バルタサルの奇跡の午後」「巨大な翼をもつひどく年老いた男」「この世で一番美しい水死者」「純真なエレンディラと邪悪な祖母の信じがたくも痛ましい物語」「聖女」「光は水に似る」

長らく文庫版では読めなかった「大佐に手紙は来ない」が収録されているのはうれしいところ。

新潮社から出ているハードカバーをそろえている人には必要ない本ですが、初心者にはいいと思います。

ガルシア=マルケス

(1928〜2014)

コロンビアの小説家。カリブ海世界の現実を魔術的リアリズムを用いて描き、神話的な世界を紡(つむ)ぎだす語り部的作家。大衆性と文学性を兼ね備える。長編「百年の孤独」「族長の秋」

引用 スーパー大辞林より 没年加筆。

【ガルシア=マルケス 本の選び方】

ガルシア=マルケスの作品は新潮社からハードカバーで出ています。

文庫本は短編・中編がほとんど。

代表作である長編は全て単行本です。

電子書籍にいたってはグーテンベルク21の短編集のみという現状。

選択の余地がないですね。

ただし、最初に手にする短編集はちくま文庫、新潮社文庫、電子書籍のグーテンベルグが選べます。

まずは目次をみて、気になるタイトルが収録されている本を選ぶのがいいと思います。

長編が電子書籍になっていないのは本当に残念。

なじみのない人名、非常に多い登場人物、こんな小説こそkindleのX-Rayの出番なのですが。

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ノーベル文学賞を受賞した作家の作品について書いています。

カズオ・イシグロ 『充たされざる者』

カズオ・イシグロ 『クララとお日さま』

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