映画『ソフィーの選択』と浦沢直樹『Monster』は似ているのか?

映画と原作

  ハリウッド映画『ソフィーの選択』。

1982年に公開されたアメリカ映画です。

150分。

監督はアラン・J・パクラ

出演はメリル・ストリープ

   ピーター・マクニコル

   ケヴィン・クライン

原作はウィリアム・スタイロンの『ソフィーの選択』

原題は「sophie’s choice」

メリル・ストリープがアカデミー賞 最優秀主演女優賞を受賞したことで有名です。

この映画はしばしば漫画家 浦沢直樹の『Monster』と共に名前が挙がることがあります。

元ネタではないか?という疑問です。

今回はこの件について書いてみたいと思います。

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『ソフィーの選択』と浦沢直樹『Monster』の類似点は?

 これからの内容は映画『ソフィーの選択』と浦沢直樹『Monster』のネタバレを含みます。

こんなブログにたどり着くぐらいですからどちらも見るなり、読むなりなさっているとは思いますがご注意ください。

メリル・ストリープが演じるソフィー。

ポーランド人の女性でアウシュヴィッツ強制収容所に入っていた過去があります。

ソフィーは映画のラスト近くで、自分に求婚してきた青年に自分の過去について語ります。

ソフィーが収容所に着いたとき、彼女は幼い娘を抱えて息子の手を引いていました。

選別の列に加わる母子。

緊張とおびえから、子供たちは母親にしがみついています。

美しいソフィーに目をとめたドイツの将校。

ポーランド人でクリスチャンだというソフィーにそれなら特別に選ばせてやろうと言い出します。

「娘か息子か、どちらかを選べ。一人だけ残してやる」

ソフィーは泣きながら拒みます。

母親が、どちらか一方の死を選ぶ―。

残酷な選択を突き付けられたわけです。

ソフィーはもちろん、選ぶことはできません。

するとドイツ人将校は子供二人を母親と引き離そうとします。

「どちらか、一人だけだ!」

究極の選択…ソフィーは

「連れて行くのなら娘にして!」と叫んでしまいます。

泣き叫びながら、連れていかれる少女。

ソフィーは狂ったように大声で泣きながら見送ったのでした。

浦沢直樹の『Monster』にはヨハンとニナという男女の双子が出てきます。

ふたりとも作品の主要人物。

このヨハンが主人公 テンマに語った過去に似たシーンがあるんですね。

チェコスロバキア人で士官の父親と遺伝子工学の学位を持つ美しい母親のもとで生まれたヨハンとニナ。

優秀な男女から「エリート」を作り出す計画の一環。

双子の両親は知らずに恋をし、子供をみごもり逃げようとしますが捕まります。

父親は殺害され、残された母と子。

なんとか逃げ出し、身元を隠して暮らしますが、見つかってしまいます。

ヨハンとニナは実験のため、連れ戻されることに。

よこしまな意図を持った男たちが押し入った部屋。

ある男が双子の母親に迫ります。

「どちらかを選べ」

そしてその時に選ばれたのが…娘だったというところ。

ちょろ
ちょろ

ただし、双子の母親はいったん息子を選んだあと娘を選んでいます。

もず
もず

二卵性双生児とはいえそっくりなふたりに同じ服装をさせていたので実際はどちらを選んだのかは謎。

ふたりいる男女の子供のうち、どちらかを母親に選ばせる―。

それが娘の方だったという点だけ見ると確かに似ていますね。

浦沢直樹の『Monster』には似ている作品が多数あります

 まず、誤解がないように先に言っておくと私は浦沢直樹の漫画が大好き。

特に『Monster』は私が人生で最もはまった漫画のひとつです。

ちょろ
ちょろ

リアルタイムで連載を読んでいました。続きを読むのが待ち遠しかったですね。

ですが、連載当時から「これ、あの作品に似ているよね?」と思うものはいくつもありました。

友人たちとも笑って話していたほどです。

(ちなみにみんな浦沢ファンです。笑)

  • アメリカの連続ドラマ・映画『逃亡者』
  • ハンガリー出身の作家アゴタ・クリストフ『悪童日記』連作
  • ロバート・K・レスラー『FBI心理分析官』
  • チェコのアニメーション作家 イジー・トルンカの作品
  • ユーゴ―『レ・ミゼラブル』
  • 海外の推理小説
  • その他 海外の実在事件

では、具体的に類似点を見ていきましょう。

 ◆『逃亡者』。

ドラマ版は1963〜1967年。

優秀な医師リチャード・キンブルの妻が何者かに殺害されます。

不幸な成り行きから容疑者になるキンブル。

無実の罪で警察に追われる身になってしまいます。

孤立無援。

キンブルは自らの手で真犯人を探し出そうとします。

医師として時に人命救助をしながらたどり着いた真相は…。

このドラマにはモデルがあります。

1954年にアメリカで起きた「サム・シェパード事件」。

ちょろ
ちょろ

昔、日本のテレビ番組でも取り上げられたことがあるね。

無実の罪で終身刑判決を受けた医師の事件です。

容疑は妻の殺害。

ドラマ化されるほど関心が高かったようで、アメリカでは高視聴率をマークしました。

1993年にはハリソン・フォード主演で映画化され、こちらもヒット。

日本人でも40歳以上であれば、当時のテレビCMを覚えているのではないでしょうか?

もず
もず

公開当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだったハリソン・フォード。映画のCMもすごかったです。

『Monster』の主人公 ドクター・テンマは天才的な外科医。

無実の罪を着せられて逃げるところ、時々、医師として患者を助けるところは同じですね。

警察をあてにできず、自分で真相に迫ろうとするところなど共通点が多いです。

人畜無害、イエスマンを絵にかいたようなテンマが、逃亡生活が長くなるにつれてたくましくなっていく様子がリアルでした。

アゴタ・クリストフの『悪童日記』の連作。

戦時下にある大国で、ふたりの少年が母親に連れられて祖母の家にやってきます。

魔女と呼ばれる祖母はふたりに容赦ありません。

孫である少年たちに重い労働を強います。

ふたりの少年は心身ともに鍛えるべくお互いを律して成長。

そして驚愕の方法で一人は国境を越え、一人は祖母のもとへ残ります。

性別は異なるものの、戦乱の国から国境を越える子供たち。

過酷な状況下でやわらかい感情をなくしていく―。

その残酷なまでの真摯さが『Monster』と共通しています。

ふたりでひとり、ひとりでふたり―。

迷宮のような連作です。

『Monster』の終盤ともイメージが重なりますね。

ちょろ
ちょろ

●●を踏みつけて国境を越える子供二人。強烈な印象を残します。

読書界に衝撃を与えた名作です。

 『Monster』には実在するアメリカの犯罪者に外見が似た登場人物が登場します。

端役ですけどね。

それが『Monster』連載当時、ベストセラーになっていた元FBI心理分析官が書いた本の写真に酷似。

『FBI心理分析官 異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記』

大男であること、幼児期の劣悪な環境までそっくりでした。

有名な犯人なので取り上げた本は多いです。

例えば当時 出版されていた『マーダーズケースブック』(略称マケブ)でもいいんですけどね。

映画『羊たちの沈黙』にインスピレーションを与えた著者だけにこちらが目立ちました。

『Monster』には犯罪心理について描かれた部分もあるので、影響を感じますね。

もず
もず

犯罪者の心をのぞき込む、驚愕のベストセラー。

ヨハンが、犯行現場に残すメッセージも実在の事件を思い起こさせます。

ロバート・K・レスラーの本でも紹介されています。

子供時代の虐待、孤独、心の傷がもとで狂っていく歯車。

愛情の希薄さが犯罪を生んでしまうことがあるという部分が強烈でした。

日本で「プロファイリング」の知名度を上げた傑作ノンフィクション。

ちょろ
ちょろ

『Monster』にもプロファイリングも出てくるよね。

チェコのアニメーション作家 イジー・トルンカの作品群

『Monster』後半の主要な舞台となるチェコ。

チェコの有名なストップモーションアニメーション作家がイジー・トルンカです。

絵本作家・人形作家でもあります。

ちょろ
ちょろ

ストップモーションアニメーションとは人形を使ったアニメーションですね。

もず
もず

『Monster』にも後半、人形劇が出てくるよね。

シェイクスピア劇や『デカメロン』などの古典に題材をとった大人向けの作品が多いです。

一方、不気味としかいいようのない映像作品も多数残しています。

『Monster』では重要なモチーフとなる「絵本」

後半、重要人物となるフランツ・ボナパルタが描いたもの。

この絵本はヨハンの計画変更を余儀なくさせる、重要なカギとなります。

それがどうも子供向けには思えない内容ですし、怖くて気味が悪いんです。

イジー・トルンカの『電子頭脳ばあさん』。

不協和音が鳴り響く冒頭。

やさしい祖母と暮らしていた女の子のところに、父親からメッセージが届きます。

「おばあさん 終わり 家 終わり 美しい 終わり こども 終わり…」

そんな暗号じみたカードが届き、祖母は少女を近未来的な建物に連れていきます。

少女は祖母と離れ、「電子頭脳ばあさん」という機械に育てられることに。

もず
もず

この電子頭脳ばあさんの教育法がいびつ!

「三人の友達がいて〇〇しあって最後は誰もいなくなって…」という誰に向けて書いているの?と聞きたくなるこわいもの。

それを、「電子頭脳ばあさん」が孫娘に語って聴かせるんです。

少女が嫌がって逃げ回るのも構わずに―。

ちょろ
ちょろ

どんな教育をほどこそうとしているんだ??

ょっとフランツ・ボナパルタと『なまえのないかいぶつ』っぽいですよね。

政治批判・文明批判・人間の愚かさを描く作品などチェコには大人向けの絵本やアニメが多いんですね。

チェコアニメや絵本作家の作品は浦沢直樹も触れたはず、と思っています。

◆ユーゴーの名作『レ・ミゼラブル』。

何度も映画化され、近年はミュージカルにもなった不朽の作品です。

この小説に出てくる、主人公を執拗に追いかけるジャヴェール警部。

その仕事熱心さとしつこさ。

テンマを追いかけるBKAのルンゲ警部はジャヴェール警部をほうふつとさせますね。

主人公が●●●を助けるところまで一緒。

もず
もず

ただし、浦沢直樹はひとひねりしますね。

海外の推理小説

涼しい顔で他人をあやつり、破滅に導くヨハン。

幼少期や特異な場面では自分の手を汚しますが、長じてからはもっぱら心酔者が実行犯。

こういう、「教祖型」犯罪者、犯罪教唆を行う黒幕はミステリーによく出てきます。

古くはコナン・ドイルが書いたモリアーティ教授。

イーデン・フィルポッツの『闇からの声』の真犯人

アガサ・クリスティの『●●●●』の犯人。

トマス・ハリスの『羊たちの沈黙』に出てくるレクター博士。

どの人物も知能が高く、影響力を持っている設定。

ヨハンとかぶる部分が多いですね。

◆その他、海外で起きた実在事件

子供の連続殺人犯というと1968年に起きたマリー・ベル事件が有名。

なんと10歳の少女が近所にする子供を手にかけたという恐ろしいケース。

衝撃的な事件なので多くの漫画家が作品にしていますね。

もず
もず

山岸凉子、森園みるくなどですね。

ヨハンとは違ったタイプの殺人犯ですが、インスピレーションは与えていそうですね。

 こう考えると『ソフィーの選択』と『Monster』の類似点はほんの一部。

他にも似た作品や多分?インスピレーションを受けたであろうものは多数あります。

優れた先行作品から栄養分を取りつつ、独自の世界を構築した浦沢直樹の『Monster』。

ちょろ
ちょろ

さまざまな国、人種が出てくる本作。

書き分けの出来る浦沢直樹の画力が光ります。

やっぱりすごいと思いますね。

『ソフィーの選択』は2022年3月30日現在、Amazon prime videoで視聴できます。

百聞は一見に如かず。

まだ見ていない人はこの機会にぜひ、どうぞ。

メリル・ストリープの透明感がある美しさは一見の価値あり。

初めての方は30日間無料体験ができます。

もちろん、やめたくなったらいつでも退会できます。

もず
もず

契約期間のしばりなし!

お付き合いいただき、ありがとうございました。

参考にしていただけるとうれしいです。

よろしかったらこちらもどうぞ。

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