『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』あらすじと感想*ネタバレあり*

映画と原作

 2019年公開のフランス=ベルギー合作映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』。

大ベストセラーの世界同時出版のために軟禁状態に置かれる翻訳家たちを描いた作品です。

原題;『Les traducteurs』。

世界で大旋風を巻き起こしたダン・ブラウンのラングドンシリーズ第四作『インフェルノ』出版時の実話に着想を得たスリラー映画。

監督 レジス・ロワンサル

出演者 ランベール・ウィルソン

    オルガ・キュリレンコ

音楽 三宅純

今回はこちらの映画をご紹介したいと思います。

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『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』あらすじ

世界的な大ベストセラーミステリー小説が完結。

オスカル・ブラックの『デダリュス』です。

全世界に熱狂的なファンがいます。

版権を持っているのはエリック・アングストローム。

社のオーナーです。

アングストロームは情報漏洩を避けるため世界同時出版を画策。

そのために9人の翻訳家が集められます。

ロシア、イギリス、スペイン、ポルトガル、デンマーク、ギリシャ、ドイツ、イタリア、中国。

それぞれの国からひとりの翻訳家がフランスに集結。

老若男女、十人十色に個性的な翻訳者たち。

彼らは携帯電話やデジタル機器を没収され、フランスにある豪邸の地下室に閉じ込められます。

豪華な食事、プールや運動施設、蔵書が詰まった図書館はあるものの軟禁状態。

翻訳作業は広い部屋で監視されながら行います。

毎日20ページずつ原稿を渡され、黙々と作業を繰り返します。

通しで原稿を読むことはできません。

翻訳はもともと個人作業。

みな、自分のやり方が出来ずに不満を持ちますが大ベストセラーの命運がかかっています。

翻訳家たちは不満とストレスを抱えながらなんとか仕事を進めていました。

そんなある日、エリック・アングストロームの元に脅迫メールが届きます。

「冒頭の10ページをネットに公開した。お金を払わなければもっと公開する」

もちろん、疑われるのは9人の翻訳家たち。

身体検査、個室の探索などプライバシーを侵害されますが、電子機器類は発見されません―。

『9人の翻訳家』感想と正直な意見

ベストセラーが人質になる、という部分は非常にユニークですね。

ダン・ブラウンの『インフェルノ』出版時のエピソードがもとになっているとはいえ、話のふくらませ方は面白かったと思います。

ちょろ
ちょろ

映画の予告編をさっと観たとき、ハリー・ポッターシリーズクラスのベストセラーならこんなこともあるかな?と思いましたよ。

実際にこの映画にインスピレーションを与えた『インフェルノ』の世界同時翻訳に携わったのは11人と言われています。

ロシア、トルコ、ギリシャ、ドイツ、オランダ、スペイン、カタロニア、イタリア、ポルトガル、フィンランド、チェコ、ノルウェー、デンマーク、スウェーデンの言語で同時リリースされたそう。

翻訳家を地下室に軟禁するのは原作者ダン・ブラウンの了承を得てのことだったとか。

(14か国同時リリースなので軟禁されなかった人もいたんですね。)

映像化しやすいように人数を減らし、ポリコレのためにアジアをプラスしたんでしょうね。

途中までおもしろく見ることが出来ました。

フランス映画のあるあるで、端役の人生まで細かく描写してしまう、というのがあります。

この映画もそう。

それ、いらんやろという点がいくつかあって中だるみしました。

翻訳者たちがけっこう、訳ありなんですね。

後半は巻き返すのですが、スリラー映画として作ったのであれば蛇足ですね。

*以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。******************

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実は首謀者は英語翻訳家。

もともと、自分のサイトに英語版をアップしていた過去がありますし、これは観ていてすぐにぴんときます。

彼がほかの翻訳家たちを巻き込んで、傲慢な出版社を糾弾すべく大掛かりな騒動を巻き起こしていたのです。

実は英語翻訳家の男性はオスカル・ブラック本人。

世に出いていた年配の学者は彼の良き理解者だったのですね。

原作者が利益ばかり追求する出版社社長に怒って鉄槌!!というのをやりたかった映画。

制作側の意図は単純。

非常にわかりやすい作りです。

ただし、この映画は小説家やクリエーターの意見を代弁しているか?と訊かれるとそんなことはなさそうです。

そもそも、世界同時発売は誰のためにあるんでしょうか?

ひとつは読者のためですよね。

世界はネットでつながっています。

SNSは民主主義国家では遮断されていません。

外国語は読めないから大丈夫?

いえいえ

ネタバレは言語でだけおこなわれるのではありません

風刺画、イラストでも犯人がわかることはありますよね。

もし、先行出版された国のツイートを目にすることがあったらと思うとドキドキしますね。

ちょろ
ちょろ

絵でネタバレの実例。日本の某出版社の文庫本はひどかった。

表紙の絵で推理小説の犯人がわかったことが3回くらいあった。

読んでいないミステリーの結末なんて知りたくないですからね。

世界同時出版はファンにとってありがたいものなんです。

好きな本は早く読みたい。

これ、当然じゃないですか。

そして、当然ながら原作者の権利を守るため。

世界は残念ながら海賊行為にあふれています。

もともと、音楽や映像作品に比べて小説家の著作権は強くないですから。

作家の桐野夏生が昔、エッセイでふれていました。

図書館はある、引用は(脚注さえつければ)やり放題、古本を売られても印税は入ってこない―。

良質な作品を生み出すには時間が必要なのに、それを支える資金が枯渇しかねない―。

原作者はあらゆる情報漏洩・海賊行為から守られて当然の存在だと思います。

それが、この映画では「世界同時出版 = 出版社の私利私欲」という扱い方をしているんですね。

やや疑問です。

そして、翻訳家の軟禁は人権侵害だと憤るのですが…

もず
もず

契約書にサインしたんだよね?大人なんだし、

個人の責任じゃない?

出版社のやり方が気に入らなければ弁護士を通してやりとりすればよろしい。

大の大人がなにやってんの??の連続。

出版社を悪、原作者や翻訳者は搾取される側という構図、かなり子供っぽいと思いました。

時折挟まれる「私は文学を愛している」が空虚に響きます。

スリラー映画として勢いはありますが、整合性は…。

原作者は出版社の販売方法が嫌なら自分で電子書籍化してAmazonで売るなり、サイト立ち上げるなりすればいいんじゃない?
あんなに頭があるんなら作品の販路とか考えたらよくない?

こんなんで人がたくさん亡くなってしまって、ふう。

 あと、映画の中でギリシャ人に「ギリシャは財政破綻を隠していた」と他国人がいうシーンがあるのですが…

ちょろ
ちょろ

ポルトガル人、スペイン人、イタリア人の

顔が映らないようになっていた。(苦笑)

もず
もず

政治的なものを感じる場面が多い映画だったね。

娯楽映画としてみても60点くらい。

家族と突っ込みながら観る映画だと思いました。

お付き合いいただき、ありがとうございました。

参考にしていただけるとうれしいです。

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